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“一発屋”デンマークを導くか。ラウドルップ以来の天才、「典型的10番」エリクセン【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

アヤックスで「典型的な10番」として育てられた

 地元のMG&BKでプレーを始めた。2005年にオーデンセBKのユースチームに移り、15歳のときには多くのチームからの誘いに応じてトライアルを受けている。チェルシー、バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、ACミラン、このクラブ名だけでもエリクセンがいかに将来を嘱望されていたかがわかる。ところが、最終的にエリクセンが選んだのはアヤックスだった。

「最初の一歩はあまり大きくすべきではないと思った。オランダへ行ったのは進歩のためにはとても良かった」(エリクセン)

 若い選手が成長するには、アヤックスは確かにとても良いクラブである。かつてヨーロッパの頂点に君臨したころの強さはなくなっていたが、それでも多くの名手を生み出していた。ズラタン・イブラヒモビッチ、ウェスレイ・スナイデル、ラファエル・ファンデルファールト、ヤン・フェルトンゲン、トビー・アルデルヴァイレルト、ルイス・スアレスなど、数々の俊英を輩出してきた。

 エリクセンは「典型的な10番」として育てられたようだ。ユースで2年、トップに昇格して3シーズンプレーした。スナイデルの後継者であり、選手時代の晩年をアヤックスで過ごしたミカエル・ラウドルップの再来だった。

 エリクセンがラウドルップを想起させるのは、その針穴を通すようなスルーパスだ。敵味方でごった返しているようにみえる中、糸を引くようなスルーパスを差し入れる。ボールが実際に通過してみて、はじめてあんなところにパスコースがあったのかと気づくようなスルーパスだ。

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