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Jリーグ 6年前

広島MF稲垣祥、「城福イズム」の申し子が快進撃の象徴に。磨き上げた「走り」という武器

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

大卒プロ入りで出会った城福監督との絆

 前線から積極的にプレスをかけて、中盤で相手ボールを奪取する。組織的な守備ができないときは、ブロックを作りながらしっかりと守って相手を焦らす。2つの守り方が使い分けられるなかで、元日本代表の青山とともに重要な役割を担う稲垣は、実は城福監督と強い絆で結ばれている

 帝京高校から日本体育大学をへてヴァンフォーレ甲府に加入し、プロとしての第一歩を踏み出した2014シーズン。チームを率いていた城福監督から受けた薫陶は、いまも稲垣の脳裏に鮮明に刻まれている。

「いろいろなことを厳しく言ってもらったので、それはさまざまなところで生きています。特に自分の強みを出せ、ということはいまでも言われています。ルーキーのときも『お前にしかできないことがあるのだから、それをもっと出せ』とずっと言われていたので。

 もちろん高校時代も大学時代も、逆に言えば他のプレーもそれなりにできちゃっていたので。それがプロになってなかなかできないことが出てくるなかで、じゃあ自分にできることは何なんだ、というのが(城福監督の言葉で)明確になった感じですね」

 プロとして初めて臨んだキャンプで実施された、持久力の多寡を示すバロメーターとなるVMA(有酸素性最大スピード)測定で、稲垣はヴァンフォーレの全選手のなかでNo.1の本数を走破している。

 最初は125mを45秒で走り、15秒の休憩後、走る距離を6.25mずつ伸ばしながら45秒以内で走り続けていく。徐々にスピードを上げていかなければ45秒をクリアできない、過酷な測定のなかで心拍数をチェックしていくことで、呼吸循環器系の回復能力や最大酸素摂取量を推測できる。

 走力を評価してオファーを出したヴァンフォーレだったが、VMA測定で稲垣が見せたパフォーマンスは、あらためて城福監督を驚かせた。いまでも4年前を振り返り、苦笑いしながら「彼のストロングポイントは本当にものすごいので」と高く評価いている。

 ルーキーイヤーから19試合、931分間に出場すると、城福監督が退任してからも右肩上がりの軌跡を描き続ける。2015シーズンは29試合(2072分間)、2016シーズンには33試合(2846分間)と数字を伸ばし、チームに欠かせない存在となった矢先にサンフレッチェからオファーが届いた。

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