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日本代表 6年前

槙野智章とハリルの強い絆。厳しさの裏にあった愛、コミュニケーションが引き出した急成長

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ボロボロに叩かれた3年前。その裏には選手への愛が

 アギーレジャパンとして臨んだ、2015年1月のアジアカップを何度もチェックしていたという指揮官は国内組にメンタル面の改革を訴えた。そして、忌憚のない舌鋒の矛先は槙野へと向けられていく。国内組だけで実施された、同年5月の日本代表合宿を前に指揮官は不敵に笑った。

「槙野に何を言うかはもう考えてある。彼のための映像も、20日も前から用意してある。いいディスカッションができると思う」

 果たして、合宿中に実施された個人面談で、ハリルホジッチ氏は特別に編集した映像をもとに、約20項目を数えた「NGプレー集」を槙野に突きつける。そして「悪く思わないでくれ」と槙野に断りを入れたうえで、国内組の全員に共通する課題だと言わんばかりに、個人面談の内容を全体ミーティングでも開示した。

「僕も期待して、この合宿に乗り込んできました」

 ハリルホジッチ氏の予言を伝え聞き、こんな言葉を残していた槙野は、プロとしてスタートを切ったサンフレッチェ広島やその後のケルン、そしてレッズで積み重ねてきたすべてを否定されるような感覚を抱いたはずだ。それでも努めて前を向き、自分自身を変えていきたいと決意をみなぎらせていた。

「全部で20項目ほどを並べられて、それらに対してひとつずつ、的確で重い言葉をしっかりといただきました。具体的なことは言えませんけれども、僕だけではなく、みんなに言えることでした。僕個人がピッチの上でそれを意識しながらプレーで表現していく、プレーそのものを変えていくことが、監督へのメッセージ返しになると思っています」

 その後も槙野のもとへは、レッズでのプレー映像が収められたDVDが定期的に送られてきている。その中身に関して「散々叩かれています」と苦笑いしながら、槙野は武器でもあるポジティブな思考回路をフル稼働させている。

「時間をかけてDVDを作ってくれるということは、映像を編集するためにさらに時間をかけて、レッズでの試合を見てくれているということ。代表に呼ばれても『ここを直せ』と何度も言われてきましたけれども、日本代表にとって僕は必要なんだ、というメッセージの裏返しだと受け止めてきました。

30歳になろうとしているのにまったく褒められない立場ではありますけど、それでも代表に呼んでくれて、怒ってくれるのは、僕のことを常に見てくれているから。監督の厳しさが僕を成長させてくれるし、僕自身を『もっと変わらなきゃいけない』という気持ちにもさせてくれる」

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