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日本代表 6年前

槙野智章とハリルの強い絆。厳しさの裏にあった愛、コミュニケーションが引き出した急成長

ヴァイッド・ハリルホジッチ氏は、「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」との理由で日本代表監督を解任された。だが、「コミュニケーション」に問題を感じず、むしろそのおかげで成長してきた選手もいる。浦和レッズのDF槙野智章は、これまでの3年間に複雑な思いを抱きながら指揮官との別れについて語った。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「一緒にW杯に、という思いはすごく強かった」

槙野智章
槙野智章はハリルホジッチ監督解任について偽らざる思いを語った【写真:Getty Images】

 時間を巻き戻すことはできない。タイムマシンで過去へ飛び、もう一度やり直すこともできない。どんな状況に直面しても常に前へ進んでいく人生のなかで、それでもマイルストーンとして、心に繋ぎとめておかなければならない思いがある。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督の記者会見が、都内で行われてから一夜明けた4月28日。浦和レッズのDF槙野智章は、埼玉スタジアムで行われた湘南ベルマーレ戦後に、胸中に秘めてきた偽らざる思いを明かしている。

「僕個人の本音としては、いままで育ててきてもらったし、プレーもそうですし、考え方も大きく変わってここにいられるのは、もちろん浦和でのプレーや指導者の方のおかげでもありますけど、ひとつはハリルホジッチ監督の厳しい言葉や、褒める言葉があってこそだと思っています。僕はすごく感謝していますし、一緒にワールドカップに、という思いはすごく強かったです」

 ハリルホジッチ前監督が初めて日本代表の指揮を執った2015年3月27日。チュニジア代表を大分中銀ドームに迎えた国際親善試合のピッチで、槙野は吉田麻也(サウサンプトン)とセンターバックを組み、2‐0の快勝を告げるホイッスルが響き終わるまでピッチに立った。

 槙野にとっては、ザックジャパン時代の2013年10月に行われたガーナ代表戦以来、約1年半ぶりの日本代表戦だった。新体制の初陣で先発として起用されるのは、指揮官の覚えがめでたい証。しかし、ハリルホジッチ氏との軌跡を振り返れば、厳しい言葉のほうがはるかに多かった。

 たとえば、チュニジア戦を2日後に控えたミーティング。あえて海外組と国内組とに分けて実施したハリルホジッチ氏は、前者には「厳しい環境でレギュラーをキープできるように頑張れ」とエールを送った一方で、国内組には容赦なく「ダメ出し」を連発している。

「相手に当たることに対して、リスペクトしすぎている。優しく当たりにいって、逆にひじ打ちを食らっている。常に強気でいって、そのなかにリスペクトの精神を持て。試合が終わってから相手に謝ればいい。試合中は全員が敵だ」

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