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ブラジルが優勝候補筆頭の理由。“控えSB”フィリペ・ルイスの戦術眼、消えない左のトライアングル【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

2種類のトライアングル

 フィリペ・ルイスがタッチライン際ではなく、1つ内側のハーフスペースに立つ。つまり、対面の相手としてセルビアの右サイドハーフであるタディッチではなく、ボランチのミリンコビッチ・サビッチを選んだ。タディッチはインサイドハーフのコウチーニョをマークすることになり、タッチラインに張るネイマールへのパスコースが開いた。

 フィリペ・ルイスがハーフスペースに立つことで、必然的にコウチーニョとネイマールの立ち位置が決まる。この試合に関して、もしかしたら今大会においても、ネイマールの立ち位置をインサイドではなくアウトサイドに定めたのは決定的な決断だったかもしれない。ネイマールはインサイドでもプレーできるが、そのプレースタイルからリスクも大きい。現に過去2試合でネイマールは最もボールを失うアタッカーだった。

 南米予選ではレナト・アウグスト、パウリーニョ、カゼミロ(またはフェルナンジーニョ)のボランチ3人での中盤構成だった。そのため、パスワークを構築できる存在がおらず、遅攻のときにはネイマールがインサイドハーフになっていた。コウチーニョはネイマールと同じ役割を右サイドで演じていた。しかし、ワールドカップが始まると左のインサイドハーフはコウチーニョになった。同時に切り札となる左のトライアングルが出来上がった。

 トライアングルの結成とともに、遅攻のときはウイングがインサイドハーフ化し、SBがウイング化する形に加えて、ウイングをウイングのまま攻撃する形も使いやすくなった。フィリペ・ルイスはセルビアの状態を見て、ネイマールをサイドへ張らせるほうを選択したわけだ。

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