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代表 6年前

モドリッチが主導、カンテを舞台から締め出した55分間。クロアチア、“必然の敗戦”も得た勲章【ロシアW杯】

text by 青木務 photo by Getty Images

カンテを宝の持ち腐れ状態に

 カンテのボール回収能力はフランスのカウンターを加速させる一助となっており、クロアチアにとっては相手の鉄板の形に持ち込ませたくなかった。だからといって、このダイナモに監視されているルカ・モドリッチも消えてしまっては意味がない。赤白の10番がボールに絡みつつ、カンテを躍動させない戦い方が求められていた。

 モドリッチは捕まりそうで捕まらない位置で顔を出し、状況に応じてパスの方向を変えていく。時折、カンテの鋭いアプローチを受けるもワンタッチでパスをさばいて難を逃れる。インサイドハーフでコンビを組むイバン・ラキティッチは、マルセロ・ブロゾビッチと並ぶようなポジショニングでボールを引き出す。サイドチェンジでアンテ・レビッチやペリシッチの突破を促した。

 またモドリッチもプレーエリアを微調整しながら、カンテの圧力を回避していく。自身の持ち場に入ってきてくれないため、カンテは対人の強さを見せることができない。サイドアタッカーの仕掛けで風穴を開けたいクロアチアにとっては、相手ボールハンターがいる中央に固執する理由はなかった。自分たちの武器を生かすだけでなく、フランスの守備から攻撃への速い切り替えを削ぐ意味でも有効な戦い方だった。

 28分にはFKから最後はペリシッチが蹴り込んで同点。ファウルの判定を受けたカンテにはイエローカード。そして、後半立ち上がりの55分に交代となった。厄介な男を舞台から引きずり下ろしたクロアチアだったが、カンテに代わって入ったステベン・エンゾンジのフィルターを破ることはできなかった。そして2-4で敗戦。意図的な戦いで優位性を生み出すことはできたものの、頂点には届かなかった。

 それでも、黄金世代と呼ばれる選手たちの奮闘やファイナルまでの進撃を振り返れば“記憶に残る2位”だと言えるだろう。チームをけん引したのはやはり、モドリッチだった。

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