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“アンチフットボール”など、「どーだっていい」。フランスを優勝に導いた草食男子の精神【ロシアW杯】

数々のドラマを生んだロシアワールドカップも幕を閉じた。同大会の頂点に立ったのは、フランス代表である。相手に対し、受け身に立つ姿勢に批判の声も多く聞かれるが、大舞台というプレッシャーを跳ね除け優勝を果たしたのは見事であった。(文:小川由紀子【フランス】)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

W杯制覇を果たすが批判の声も

フランス代表
20年ぶりにW杯頂点に立ったフランス代表【写真:Getty Images】

 7月16日、優勝カップを手に帰還したレ・ブルーの面々を讃えようと、シャンゼリゼ通りには、信じられないほど大勢の人々が詰めかけた。軽く10万人は超えていただろう。しかも彼らはほんの一部だ。

 フランスの津々浦々、そして世界各地に、フランスの優勝を祝い、ハッピーな気分を共有した人がまだまだ大勢いた。スポーツショップの前には、決勝戦の翌日から、胸に星が2つ刻まれたシャツを求める人たちで溢れている。

 決勝戦が終わった直後の興奮冷めやらないピッチ上で、テレビのマイクに向かってキリアン・エムバペは言った。「大勢の人をハッピーにできたことがとてもうれしい!」

 気持ちが落ち着く前に口から出たこの言葉こそ、彼の本心を表したものだろう。

 この大勢の観衆は同時に、一歩間違えば失意のドン底に陥れてしまう可能性があった人たちでもあった。それを思うと、これだけ多くの人たちの期待を背負って戦うプレッシャーとはどれほどのものかと怖くなる。

 今大会でのフランスの戦いぶりについては、対戦国のクロアチアやベルギーを筆頭に、他国からは批判も聞かれる。

「守備的すぎた」「スペクタクルではなかった」「見ていてつまらない試合ばかりだった」

 個人的にもその印象には同感で、ニュートラルにフランス戦を見ていたら、気づけばほとんど毎試合、相手チームを応援していた。

 優勝直後は礼賛ばかりだったフランスメディアでも、時間が経つにつれ「今回はこれで良かったが、この先このままではどうか」といった批判的なコメントも出始めている。

 元代表のMFハテム・ベン・アルファもフランス・フットボール誌で、フランスの優勝は祝福しつつも、「今回のような超現実主義のプレースタイルはいただけない。これが世界のスタンダートになってしまってはいけない。世界王者のスタイルが各地の育成所の方針になるのはよくあることだが、この戦い方が手本にはなってほしくない」と忌憚なく綴っている。

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