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Jリーグ 6年前

F・トーレスと金崎夢生は“仲良し”になれるのか。鳥栖の浮沈を左右する強力2トップ誕生

text by 舩木渉 photo by Getty Images

動きすぎる金崎をどう制限するか

 原因はいくつかある。1つはチーム全体のベクトルがF・トーレスに向かっていることだ。これまでも豊田やビクトル・イバルボという、わかりやすいターゲットがいたこともあって、鳥栖の選手たちはボールを持つと、まず最前線のF・トーレスを見る。

 ある程度雑なロングボールでも、厳しめの縦パスでも、単なるクリアでも、F・トーレスに預けておけば、そのまま前に進める確率が他よりも高い。ただ、磐田戦の場合はうまく「次」につなげることができなかった。

 システムを4-4-2に変更したことで、F・トーレスと中盤の間が広がり、こぼれ球を回収して二次攻撃に持ち込む流れを作りにくくなっていた。後半は選手の距離感が幾分か改善されていたが、特に前半は選手間の距離が遠く、縦パスを前に入れる回数は少なかった。代わりに増えたのは相手のブロックの外へ逃げる横パスだったが、鳥栖にサイドを崩すオプションは少なく、そこから効果的な攻撃につなげられなかったのもまた事実である。

 もう1つ、2トップが満足に機能しなかった原因は金崎自身にある。良くも悪くも自己主張が強いタイプの選手で、他のチームメイトとは違ってF・トーレスを特別に意識していない様子はプレーから見てとれた。

 存在感抜群のベテランFWの動きを利用してスペースに飛び出すことはあるが、チャンスをお膳立てするような“忖度”は一切ない。試合中に2トップが連係についてコミュニケーションをとっている様子も見受けられなかった。

 そこで気になったのは、金崎の「動きすぎ」である。鹿島時代も同様の現象は見られたが、金崎はとにかくよく走る。攻撃から守備への切り替えは素早く、相手に猛然と襲い掛かるようなプレッシャーをかけ、再び攻撃に移るとサイドにまで顔を出して、多少無茶な体勢でもボールを要求し、無謀だと思われても厳しい角度から強引にフィニッシュに持ち込む。

 これを「アグレッシブ」「積極的」とポジティブに捉えることもできるが、状況によっては「自分勝手」「判断力がない」とも捉えられかねない。紙一重ではあるが、磐田戦の動きはすべてが効果的とは言い難いものだった。

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