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乾貴士がベティスで直面する熾烈な競争。新天地デビュー戦で見えた今季の方向性と現状

text by 舩木渉 photo by Getty Images

2シャドーの一角という新たな役割をいかに消化するか

キケ・セティエン
ベティスのキケ・セティエン監督は昨季、3バックの導入でチーム力を劇的に向上させた【写真:Getty Images】

 十分に2つのチームを作れるだけの戦力を揃えた状態で、エイバルとは比べ物にならない競争にさらされる。それが群雄割拠のラ・リーガで昨季6位に躍進したベティスの現状であり、在籍する選手にとっての宿命でもある。

 乾は2シャドーの左をメインに、隣のホアキンとのコンビネーションで相手ディフェンスを崩そうと試みるなど、新しい役割での動き方を習得しようとしている段階にある。エイバル時代のように左サイドでボールを持ったら迷わずドリブル突破に入れるような状況は少なく、デビュー戦の約20分間ではドリブルでの仕掛けをほとんど見せなかった。75分にはホアキンとスイッチして中央突破を試みてファウルをもらったが、そのような場面はエイバル時代に比べ明らかに少なかった。

 ベティスは前半も後半も一貫して中盤の中央から細かいパスワークで相手の守備組織を引きつけ、十分に収縮したところでフリーか1対1の状況を作れるどちらかのサイドに大きく展開、そこを突破してゴールへ…という形をベースに持っている。

 前半であればアンカーと2シャドー、2トップ、70分以降であれば2人のセントラルMFと2シャドー、1トップの5人が流動的に動きながら、縦方向に少ないタッチでボールを動かし続けることで相手の守備組織を揺さぶり、人とボールの動きのコンビネーションでバランスを崩そうとする。そこにオートマチックに絡めるようになれば、乾も自分の強みを生かせるタイミングを見出せるだろう。細かいコンビネーション自体は苦にしないはずだ。

 昨季からチームを率いるキケ・セティエン監督は、華麗なパッシングフットボールをベティスに植えつけてヨーロッパリーグ出場権獲得に導いた。前半戦は大味な試合も多かったが、3バックの導入は守備力を飛躍的に向上させた。さらにウィングバックの攻撃的な振る舞い、中盤のパスコース増加などが功を奏して攻撃力もアップした。

 今季は木曜日にヨーロッパリーグの試合をこなす週も増えるため、2チーム分の戦力が必要で、ローテーションの中で乾にも十分なプレータイムが与えられるはず。まずは1日も早くチームの戦術を理解し、ホアキンの相棒としての地位を確立したいところだ。

(文:舩木渉)

【了】

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