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Jリーグ 6年前

イニエスタ不在でバランスとリズムを欠いた神戸。課題を露呈した一方、今後へ2つの収穫

text by 青木務 photo by Getty Images

新加入アタッカーが加えたアクセント。イニエスタとの共演がもたらすもの

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FC岐阜から加入した古橋亨梧【写真:Getty Images】

 58分、藤田が自陣で奪うと左を走った古橋にパス。ドリブルから中に運んで渡邉につけると落としをウェリントンが狙った。この場面では藤田がマイボールにした瞬間、ウェリントンが楔を受けようと降りる。チャン・ヒョンスがその動きに釣られ、左サイドに生まれたスペースに古橋が侵入した。前半は孤立無援だったブラジル人ストライカーも、後半に入ると味方が出てくるようになり、囮の動きも効果を発揮した。

 さらに65分にも藤田が中盤でボールを拾うと、古橋が前向きにパスを呼び込んでドリブルを開始。自ら運び右足を振り抜いた。これは相手GKの好セーブに阻まれたが、単独でのフィニッシュという前半の神戸にはなかったプレーを披露した。藤田が持つと、古橋はタイミングよく加速して相手のマークを外す。ゴールに向かってボールを運ぶことで追走する相手に足を出させない。ゴールを奪うことはできなかったが、駆け引きの上手さから見せ場を作った。

 44,801人もの観客が詰め掛けた味の素スタジアムで神戸は敗れている。しかし、チグハグな前半を修正したことはもちろん、既存選手とは異なる特徴を持つアタッカーが存在感を放ったことも今後に繋がるだろう。イニエスタが加われば「ラスト3分の1の崩しなどは変化が出てくる」と吉田監督は述べているが、得点や勝利への期待が高まるのは明らかだ。

「世界でやっている選手なので、いいところをどんどん盗んで、そして引き出してもらえるようにどんどんコミュニケーションをとっていけたらいいなと」

 はにかみながら古橋は言った。世界最高の選手との共演は、23歳のアタッカーの進化を促進させるのではないか。敗戦の中で収穫も持ち帰ったヴィッセル神戸は次節、ホームでジュビロ磐田と対戦する。

(取材・文:青木務)

【了】

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