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Jリーグ 6年前

イニエスタが相手の脅威となる理由。名波監督の着眼点、磐田の選手たちが触れた“世界”

text by 青木務 photo by Getty Images

イニエスタが最適なプレーを出せる理由

「常に前を見ているところ。前への選択が多いというのはわかりやすいと思うし、ほとんどバックパスがない。それに、ワンプレーで終わらない。叩いて動いて、叩いて動いてを繰り返す。スピードこそ、そんなに出していないけど、次にもらうこと、次の展開を常に考えている。つまり予測だよね。それが凄いなと」

 イニエスタは[4-3-3]の左インサイドハーフを起点にポジショニングを微調整し、前向きなプレーができるよう計算して動いている。味方がパスを出しやすい位置に動くからこそ、プレーに連続性が生まれる。とはいえ、必ずしも自分中心にゲームを作りたいわけではない。彼がもたらす連続性とは自分のためではなく、チームの攻撃がスムーズに流れることを意図している。

 もちろん、ボールを持てば天才的なアイディアを発揮する。磐田戦でも何度もチームの攻撃を加速させている。例えば25分のシーンでは、味方がボールをカットするとイニエスタがドリブルで前進。またぎのフェイントでマーカーを翻弄し、相手を引きつけておいてポドルスキにパスを送る。フリーになった元ドイツ代表の正確なクロスに古橋享梧が飛び込んだ。古橋のハンドでノーゴールとなったが、イニエスタを起点に決定機を作り出した。

 80分には左寄りでボールを受けると、少しタメてから大外を駆け上がった味方を使った。最後はクロスをウェリントンが強烈なヘッドを放っている。イニエスタが受けた時、ボックス内でラストパスを待っているのはウェリントンだけだった。相手を引きつけること、味方がいい状態でクロスを上げること、中にもう一人入ってくることを考慮して時間を作っていた。

 時に少ないタッチでボールを離し、時に自ら持ち込んで相手に脅威を与える。状況に応じて最適なプレーを出せる点も、予測力のなせる業ではないか。

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