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Jリーグ 6年前

イニエスタが使い分けた3つの顔。圧巻の2戦連発弾だけではない、その他に見るべきものとは

text by 青木務 photo by Getty Images for DAZN

テンポを変える引き出しの多さ

 前半立ち上がりの6分には、稲垣祥に激しいチャージを受けた。イニエスタは少し怒ったような表情を見せた。多くの時間でフリーになっていた前節は異なり、この日は広島のタイトなマークに遭ったイニエスタ。しかし、警戒されてピッチの上に倒されるのはこれまでも日常茶飯事だったはず。表情は変わっても心の中は平静を保っていた。ゴールシーンを含め、試合を通して落ち着いたプレーでチームを操っていた。

 イニエスタのボールタッチは決して少なくないが、ボールに触りたくて動いているわけではない。例えば14分の場面では、左のタッチライン際でティーラトンがパスの出しどころを探していたが、イニエスタはあえて近寄らず後ろに下げるよう腕を振った。技術に長けた選手はボールを触ることで自分とチームのリズムを作る傾向にあるが、イニエスタは違う。それでも触れていないという印象を受けないのは、受けられる時に確実に受けて次のプレーに繋げているからだ。その場その場の判断ではなく、全体を見ながらいるべき場所にポジションを取っている。

 言い換えれば、ボールを持って何かしようとなった時のイニエスタは絶対に失わない。17分、中盤でボールを受けると無駄のない動きで前に運ぶ。相手に密着されると、無理な打開を試みることなく、味方に預けた。相手の守備を突破するため、というよりプレーのテンポを変える引き出しが多い印象だ。

 また、この場面でイニエスタをマークしたのは稲垣。試合早々に激しく当たられたイニエスタにとっては、『怯んでいないぞ』という姿勢を見せる動きでもあったのかもしれない。

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