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セリエA 6年前

必然だったロナウドのセリエA初ゴール。接戦の中で本領発揮、ユーベに流れるDNAの象徴

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

ロナウドは抜け目のない選手の象徴

 だが、サッスオーロの各選手には当然ながらプレッシャーが掛かっていた。そして集中した守備陣は、一瞬ほころびを見せた。49分、CB陣はボールの処理を誤ってCKをユーベに献上。その直後だった。こぼれ球の落下点に入ったフェラーリは、GKにヘッドで渡そうとしたのか中途半端になる。あろうことかこのボールはポストに当たり、ゴール前の中央に折り返された。

 これに喰らい付いたのが、ロナウドだったのだ。相手の直前のプレーから何かを感じ取ったのか、まるでミスを予測していたかのようなタイミングで動き出し、ゴール方向にダッシュを掛けていた。ゴール前に待ち構えて、偶然ボールが目の前に転がってきたというような類のゴールではない。点取り屋としての嗅覚が働いたからこそ、ありつけたものだった。

 サッスオーロはここから反撃に出るが、ラインを上げて攻め出したことで隙も作る。ここを突いたのも、またロナウドだった。65分、CKのカウンターから一気に裏のスペースへと走り、スルーパスを受けたのちにGKの位置を確認。右隅にシュートコースが空いていることを見抜き、左足で正確なキックを蹴った。自らに訪れたチャンスをきっちりと生かして、冷静沈着に追加点を挙げる。これもまた、ストライカーとしての本分をなす働きであった。

「足りなかったのは詳細な部分の詰めだった。他方ユーベには、DNAの中に抜け目のなさや強引さが備わっていた」とデ・ゼルビ監督は語った。2ゴールを決めたロナウドはまさに、抜け目のない選手の象徴だったということになる。

 一瞬のチャンスを生かして強引にでもシュートをねじ込み、狡猾にゴールを奪う力があるかどうかで、接戦をものにできるかどうかが決まる。もともと勝負強さに定評があったユーベがCR7を獲得したのは、その上乗せのために他ならないのだ。接戦となったこの試合で得点力が解放されたのは、まさに必然の理だったと言える。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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