フットボールチャンネル

トゥヘルがPSGにもたらす変化。工夫施す選手の徹底管理、良質なクラブを作り上げるその手腕

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

選手一人ひとりをしっかり見ている

 昨季は、開幕そうそうエディンソン・カバーニとネイマールのPK奪い合い事件などが勃発し、以来、ピリピリ、ギスギスした空気がクラブ全体に漂っていて(あおっていたのはメディアだが…)、取材に足を運ぶと気が滅入る感じだったが、今年はなんだか去年よりもずっと楽しそうだ。

 ブラジル人記者が会見の席でトゥヘルに、「ブラジル人選手の印象は?」と聞いた時、新指揮官は「彼らの周りにはいつも音楽があって、ジョークを言って笑い合っていて、そういう楽しい雰囲気は大好きだ。その一方で、彼らはやるべきことには真剣に取り組む、そのメリハリが素晴らしいよ」と笑顔で答えていたが、ネイマールを筆頭に、チアゴ・シウバやマルキーニョス、ダニエウ・アウベスと、ブラジル人軍団はPSGの主力。彼らが気分よく毎日を送れていると、おのずとチーム全体のパフォーマンスも雰囲気も上向きになる。

「PSGはトゥヘル監督のもとで良い方向に向かっていきそうだな」という予感がするが、そう感じる理由のひとつは、このドイツ人監督が、選手一人ひとりを良く見ていることだ。

 着任直後トゥヘルも、「選手全員を彼らがもっとも適したポジションで起用したい」と話していたが、これまでの既存の概念にとらわれず、彼の目で見て、その選手にあったポジションやプレースタイルを開拓し、提案しようという姿勢が彼にはある。

 マルコ・ヴェラッティが怪我で欠場していた間は、マルキーニョスを守備的MFで起用した。賛否両論あったが、動きの量が豊富でスピードもあり、反応が良いところは好感触だった。それにこれまでMNC(キリアン・エムバペ、ネイマール、カバーニ)トリオのバックアッパーだったアンヘル・ディ・マリアのことも、トゥヘルは第4の攻撃手として買っていて、MCN+ディ・マリア、という新たな陣形も登場している。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top