フットボールチャンネル

日本代表 5年前

「日本はいいチーム。でも、まだ弱い」その理由。別次元の“NMD”、階段上り始めた新世代【宮澤ミシェルの独り言】

シリーズ:宮澤ミシェルの独り言 text by 青木務 photo by Junichi Ebisawa , Getty Images

やってはいけないことを全部やった3失点

 何度も言っているけど、僕は最初からウルグアイに勝てると思っていた。ただ、試合中に何度か彼らを蘇らせてしまっている。4-2まで行ったらそこで終わらせないといけない。特にセットプレーは課題だよね。それから後半の入りも悪すぎた。簡単にチャンスを作られてしまっているし、あそこで失点していたら日本は負けていたと思う。

 セットプレーについては、日本人より相手の方が大きくて強いんだから、普通にやっていてもまず競らせてもらえない。そこから始まる。ぶつかり合い、ファウルにならないギリギリの駆け引き・・・日本人に一番足りないところだね。

 競り合いが強くなるということは、どんな手段を持っているかなんだ。最後の局面ってスタッフが教えきれない。教えただけじゃゴールを奪えないのと同じで。

 僕が現役時代にやっていたのは、勝てないけどマークする相手にも打たせないということ。競り勝つわけではないけど、負けてもいないという風に。教えられない術をいくつ持つかなんだよね。極端だけど、頭突きしなきゃいけない、必ず相手の顎下に頭を入れる、手で押すとか。そういう局面って必ずある。とにかく、何かしないと負けるだけだから。

 僕がドイツの選手とチームメイトになった時、その選手は「腕を鍛えて相手の腰を掴んで浮かせろ」って言うんだよ。自分が不利な体勢になると、元々の体格差とか不利な部分がそのまま出ちゃう。ウルグアイもそれをわかっているから、セットプレーでファーに振ってきたでしょう。差が出るところで勝負されているんだ。速いボールに触るというのは日本人も負けない。ところが下がりながらの対応を強いられると不利になる。それが嫌で早めに動くと、今度は前に入られる。難しいんだよ。

 日本がセンセーショナルな戦いを見せたのは間違いないし、ウルグアイも驚いたと思う。だけど日本が強いかといったら、そのジャンルにはまだ入ってこない。すごくいいチームだけど、強いかといったらまだ弱い。3点も取られてはいけない試合だった。セットプレー、バックパスのミス、交代直後・・・やってはいけないことを全部やっての失点だったからね。その意味ではまだ弱い。でも評価は上がるよね。日本のサッカー、面白いなって。

▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。

【了】

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top