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日本代表 5年前

安部裕葵、U-19日本代表離脱の深層。ACL決勝参戦へ…成長願う影山監督の偽りなき本音

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki

最初から最後までプロフェッショナルだった19歳

 記者から自身の鹿島帰還の可能性について問われても「(代表とクラブのどちらを選ぶかは)難しいですけど、個人的な感情は出すべきじゃないと思うので。(感情が)あったとしても出さないですし、与えられた環境でやることが素晴らしいサッカー選手。自分のステージで輝くべきだと思っています」と、自らそれを望むような素振りを見せることはなかった。

 もしU-19日本代表を離れて鹿島に戻る可能性があるとすれば、AFC U-19選手権の準々決勝に勝利してU-20ワールドカップ出場を確定させた後になる。インドネシアまで取材に訪れていたメディア関係者は皆この認識を共有していたが、チーム関係者や安部本人に対し必要以上のアプローチをかけることはなかった。

 大会が進めばいずれわかること。探りを入れはしても、スクープで誰かを出し抜く、あるいは日々一体感が高まっていくチームに亀裂が生じたり、士気に悪影響が及んだりするような報道に意味はない。準々決勝が終わればチームを離れることは事前にある程度決まっていたかもしれないし、そうでないかもしれないが、結局のところJFAのリリースで正式発表されるまで、メディアも、監督も、スタッフも、安部本人も途中離脱の可能性があるような素振りは一切見せなかった。

 むしろ安部はインドネシアに勝利した後も、「こういうワールドカップをかけた試合は緊張感がありました。相手も1回やった時(今年3月の親善試合)とは違うような顔つきだったし。でもこういう経験は僕にとって絶対にプラスになる」と淡々と語り、誰よりも「まだこの先に準決勝、決勝があるぞ」という姿勢を前面に出していた。

 大会前はコンディション調整に苦慮して別メニューが調整していたが、グループリーグの途中では「1試合1試合、準決勝、決勝となるにつれて、チーム全員で言っているのは、決勝で一番いいコンディションになれるようにということ」と、U-20ワールドカップ行きが決まる準々決勝ではなく、あくまで決勝に照準を合わせて最高の状態を作っていくことの重要性も語っていた。

 U-19日本代表の一員としてのアジア制覇に並々ならぬ意気込みと、人一倍の士気の高さを感じさせたのが安部だった。別格の輝きを放ったピッチ上でのプレーからも、あくまでチームの勝利を考えた貪欲さが感じられた。

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