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Jリーグ 5年前

韓国代表永久追放…チャン・ヒョンスが流した涙の理由。FC東京で誓う「愛」への恩返し

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「サッカーへの愛を忘れずに」

チャン・ヒョンス
チャン・ヒョンスはサポーターからの愛情を感じながらFC東京のために戦い続ける【写真:Getty Images】

 試合後、ヒーローインタビューを終えたチャン・ヒョンスは1人でアウェイ側に陣取るFC東京サポーターの前に出て、3回、4回と何度も深く頭を下げた。ロッカールームへ引き上げていく際には、涙を拭う様子も見せた。熱い気持ちが込み上げてきていた。

「チームが勝ったことが全て」と語る青赤のキャプテンだったが、やはり「サポーターの方々に自分のプレーで恩返しをしていきたいと思って今日の試合に入りました」と、特別な思いを胸に横浜FM戦に臨んでいた。

「一生懸命、練習して、試合に臨むということがサッカー選手として一番のこと。自分としてもやはりサッカーを愛していますし、サッカーが好きでやっているので、そういう気持ちを忘れずにもっともっと精進していきたいと思います」

 騒動が明るみに出てから、初めてメディアの前で自らの思いを語ったチャン・ヒョンスの表情は、決して明るいとは言えないものだった。しかし、韓国代表からの永久追放など思い処分を受け、自らを見つめ直す時間もあったのだろう。自分の過ちは自分のプレーで取り返していく、その覚悟が言葉の端々から滲み出ていた。

 複雑な思いを抱えながらプレーしたキャプテンの獅子奮迅の活躍に、FC東京サポーターは声援で応えた。何度もチャン・ヒョンスの名前をコールし、スタンドには彼の名前や背番号をモチーフにしたフラッグが数多く掲げられる。背番号48は右腕を空に突き上げながら、その温かさを心で感じて涙を流したのかもしれない。

「サポーターの方々が何度も自分の名前を呼んでくださったことに対し、本当に感謝の気持ちが大きかったですし、そのサポーターたちのために自分は恩を返していかなければいけないなと思っています。これからも自分がFC東京のために、愛されるサッカー選手としてもやっていかなきゃいけないなと思います」

 チャン・ヒョンスの社会奉仕活動水増し報告問題を受けて、韓国国内では兵役免除を受けている他のアスリートにも再調査の動きが広がり始めているという。ゆくゆくは兵役免除という特例そのもののあり方を見直す動きが出てくるかもしれない。

 韓国社会全体に大きなインパクトを与えることになった今回の一件を経て、代表選手として兵役免除を受けることの責任の大きさを再確認し、重みを身にしみて感じているだろう。それでも変わらぬ愛と信頼を表現してくれたFC東京のサポーターや、監督、チームメイトたちのために、チャン・ヒョンスは戦い続ける。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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