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Jリーグ 5年前

韓国代表永久追放…チャン・ヒョンスが流した涙の理由。FC東京で誓う「愛」への恩返し

text by 舩木渉 photo by Getty Images

長谷川監督からの信頼は揺るがず

 こうして重い処分を受けたチャン・ヒョンスは、KFAの公式サイト上に謝罪文を掲載。「僕は2014年のアジア大会で、国民の皆さんの情熱的な応援とたくさんの愛のおかげで、幸いなことに良い結果を得て、兵役における特例を受けることができました。しかし、サッカー選手として集中して努力するように、国民の皆さんが自分にくださった貴重な機会と、技術を活用した社会奉仕活動に専念すべきであるにもかかわらず、これを適切に履行していませんでした。本当に申し訳ない気持ちだけです」などと、長文のメッセージで自らの過ちを詫びていた。

 この謝罪文の中で、チャン・ヒョンスは「申し訳ない」という言葉を、似た表現も含めて5回も用いていた。それだけで、今回の事態の重さは容易に想像できる。

 今月1日に韓国代表から永久追放を受けた。そこから気持ちを整理し、次の一歩を踏み出すには相当な勇気が必要だっただろう。前向きに自分の気持ちをコントロールできなければ、その影響がピッチ上のパフォーマンスに出てしまってもおかしくない。

 だが、FC東京の長谷川健太監督は、キャプテンを任せているチャン・ヒョンスへの揺るぎない信頼を自らの采配で示した。3日に行われたJ1第31節の横浜F・マリノス戦で普段通りキャプテンマークを託し、先発起用したのである。

「今日は期する思いがあったと思いますし、とはいっても今はサッカーに集中することしか彼にはできないと思います。チームからの厳重注意という通達があって、韓国の協会からの発表があって、難しい状態だったと思いますけど、『サッカーを頑張ります』ということで、今日の試合に向けて話を少ししましたので、そういう意味では今季のキャプテンですし、信頼して彼をピッチに送り出しました」

 長谷川監督は横浜FM戦後の記者会見でチャン・ヒョンスへの信頼を強調していた。FC東京からも今回の一件で厳重注意が言い渡されてはいた。それでもピッチ上で自らの責任を果たすと誓ったキャプテンは、指揮官からの信頼に見事なパフォーマンスで応えて見せた。

 15分、コーナーキックの場面で横浜FMのDFチアゴ・マルチンスのマークを振り切ったチャン・ヒョンスは、長めのヘディングシュートをゴール左隅に突き刺した。すると大きく喜びを表現することなく速やかに自分のポジションの方へ戻り、反対側ゴール裏のFC東京サポーターの前まで行って深々と頭を下げた。この試合にかける思いが込もった一発は決勝点となってFC東京の勝ち点3につながった。

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