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Jリーグ 5年前

鹿島はなぜベイルを止められなかったのか。レアルの引き出し、網を破る工夫と“相棒”の援護

text by 青木務 photo by Getty Images

『槍』となったベイル

 8分、マルセロが左サイドに張り、ベイルが内側から外にフリーランを敢行している。ベイルが走り出す直前、西はボールの方を見ながら間接視野でウェールズ代表を捉えていたと思われるが、出し抜かれた。それでも、ここはチョン・スンヒョンのタイミング良くカバーに入り事なきを得た。

 チームで守ることができていた鹿島だが、マドリーもチームで攻めてくる。27分、トニ・クロースからルカ・モドリッチに縦パスが入ると、今季のバロンドールはドリブルで前進。その瞬間、左サイドに開いていたベイルが中央へ斜めに加速し、チョン・スンヒョンと西の間のエリアに侵入した。

 31分には、ベイルが中間ポジションからクロースのスルーパスを引き出す。チョン・スンヒョンとのスピード勝負から折り返すも昌子がクリアした。さらにベイル→カリム・ベンゼマ→マルセロと繋がり、左のスペースに走り込んだベイルのクロスをベンゼマが頭で合わせている。突破口を開こうとするマドリーの工夫に対し、鹿島はギリギリの対応を迫られるようになった。

 左から攻め続ける欧州王者が先制したのは44分。ベイルがマルセロとのワンツーで西の背中を取ると、フリーとなった背番号11は落ち着いてネットを揺らした。

 このゴールはスローインから始まっているが、巻き戻すとそこでもベイルが相手の優位に立っている。中盤で奪うとモドリッチがドリブルで運び、左サイドでベイルと西が一対一になる。西は縦のコースを切って中に行かせようとするも、ベイルは切り返しで縦へ進んでクロスを供給。これを鹿島がクリアして、マドリーのスローインとなった。

 耐えしのぎながらハーフタイムを迎えようとしていただけに、鹿島にとっては痛恨の失点だった。想像以上の重荷となったか、53分には山本脩斗が後ろにボールを戻すと、走り込んできた相手に焦ったチョン・スンヒョンが中途半端な処理をしてしまう。そして、ベイルに無人のゴールへ流し込まれた。

 その数分前に山本は、ゴールライン手前でシュートをクリアするなどピンチを救っていただけに、悔やまれるミスとなった。

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