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日本代表 5年前

植田直通と豊川雄太の対峙、これぞ「運命」。高校&鹿島で同期、欧州で親友は最高のライバルに

text by 舩木渉 photo by Getty Images

互いの存在を刺激に飛躍できるか

豊川雄太 植田直通
植田直通(左)と豊川雄太(右)は鹿島アントラーズでも世代別代表でもずっと一緒だった【写真:Getty Images】

 後半が始まってそれほど経たない頃、豊川は右サイドからのクロスに飛び込んで、シュートモーションに入ったところで相手選手との接触で声をあげて倒れた。ゴール前の相手の嫌がるところに入り込んでくるオイペンの背番号20が痛がる姿を、植田はポジションを上げながら一瞥して少し気遣ったように見えた。直接マッチアップする機会はそれほど多くなかったが、2人は常にお互いのことを意識してプレーしていた。

 植田は語る。

「(豊川と)競り合ったりはしたんですけど、前の試合とかは簡単に勝てていても、あいつはやっぱり映像を見て勉強しているんでしょうね、今日とかはかなり。僕も嫌がるような競り合い方をしてきたし、あいつは常に成長しているなと感じました」

 一方、豊川は植田の見立て通り、競り合いに無類の強さを発揮する元チームメイトとの戦いをあえて避けるように巧みに駆け引きをしていた。「あいつ(植田)、高かったです。だからあいつのところには行かず、5番のところに行きました」。相方のイサアク・コネが本職のセンターバックでないことを見抜いていたのである。

「あいつは代表にも入って、いろいろな活躍をして、ワールドカップに出たりもしていますけど、俺も負けないように、こっちでしっかりと頑張って…という思いはずっと持っていますので」

 植田よりも一足先にヨーロッパで挑戦を始めていた豊川だが、親友が自分と同じリーグにやってきたことで運命的なものを感じ取り、さらなる成長を目指すうえでの刺激にしている。今季はリーグ戦21試合中18試合に出場し、ベンチスタートだった3試合も全て途中投入でピッチに立っている。クロード・マケレレ監督から1トップの大役を任されて4得点、「来年はもっと得点という結果にこだわる」と自信を深めているところだ。

 一方、センターバック陣に負傷者が相次いでいることもあるが、植田も欧州初挑戦ながら17試合に出場し、うち13試合で先発起用された。「なかなか自分のやりたいようにやれないもどかしさもあるけれども、そういうのも僕はすごく楽しいし、それを乗り越えて僕ももう一段階レベルアップすると思う。自分がもっと指示を出して、自分がチームを動かしていかなきゃいけない」と最終ラインを引っ張るディフェンスリーダーとしての自覚も芽生えてきている。

 余談にはなるが、実は26日のセルクル・ブルージュ対オイペンには2人の大津高校時代の同級生が観戦に訪れていたという。観客席には鹿島のユニフォームを着たファンの姿もあった。それを見た豊川は「植田のユニフォームを着ていたんですよね…俺がいること忘れちゃったのかな?」と冗談めかして笑っていた。

 いやいや、そんなはずはない。我々メディアも、大津高校時代の同級生も、植田のユニフォームをまとった鹿島ファンも…皆2人の「運命」に引き寄せられてこの試合に集まったのだ。植田と豊川、1994年生まれで来年25歳になるこの2人の運命的な筋書きのないドラマは、今後どのような物語を描いていくか。続きを見届けるのが楽しみで仕方ない。

(取材・文:舩木渉【ベルギー】)

【了】

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