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Jリーグ 5年前

広島の新戦力サロモンソンは「子供に話してあげたい、そんな選手」。母国で特別な存在となった理由

text by 鈴木肇 photo by Getty Images

自らの体験を語り、多くの人々に勇気を

エミル・サロモンソン
サロモンソンは国内でのプレーが評価されてスウェーデン代表としてもピッチに立った【写真:Getty Images】

 かつてスウェーデンの有名なアイスホッケー選手が潰瘍性大腸炎により引退を余儀なくされた。サロモンソンも同じ運命をたどることになってしまうのではないかと周囲は危惧し、本人も「手術が成功しなかったらスパイクを脱いでいただろう」と当時の心境を打ち明けている。

 だが、優秀な医師の助けや周囲のサポートもあって手術は無事に成功。そして、周囲の予想よりもはるかに早くピッチに戻ってきた。術後から2ヶ月後の2013年2月、トレーニングマッチで実戦に復帰。試合後は、観客席で見守っていた両親とともに涙して喜びを分かち合ったという。

 サロモンソンは潰瘍性大腸炎についてもっと知ってもらいたいと考えた。腸に問題を抱える若者を支援する団体のポッドキャスト番組に出演して、自らの体験を語った。潰瘍性大腸炎で苦しんでいるフロアボールの選手には、励ましのメッセージを書いたサイン入りユニフォームをプレゼントしたこともある。

 この選手は後ほど、「サロモンソンがいなかったらこの病気と向き合っていけたかどうかわからない。あらゆるスポーツを諦めていたと思う。だけど、潰瘍性大腸炎を患っても続けられるということを彼が教えてくれた」と語っている。彼の人間性を表す逸話と言えるだろう。

 手術の前、「復帰できたらサッカー選手としてもっと成長したい」と決意を秘めていたサロモンソン。その通り、戦列に復帰してからは凄まじい勢いで上昇する。課題とされていた守備面で進歩を見せ、リーグ最高の右サイドバックと言われるまでに成長。そして2016年3月のチェコ戦で念願だったフル代表のキャップを刻み、ズラタン・イブラヒモビッチらと同じピッチに立つ。

 さらにリーグアワードでは最優秀DFにノミネートされた。この2016年シーズンは彼のキャリアの中でも最も充実していた時期だったと言える。翌2017年には、ロシアの強豪スパルタク・モスクワが獲得に乗り出したこともあった(最終的にS・モスクワ側が別の選手を獲得したため、移籍は破談となった)。

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