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Jリーグ 5年前

神戸FWビジャ、そのクオリティの真髄とは? 打ち続けた初ゴールへの布石と心理戦

text by 青木務 photo by Getty Images

すでにチームに順応

 ビジャはすでにチームスタイルの中で持ち味を発揮している。その点で、鳥栖のフェルナンド・トーレスとは対照的だった。鳥栖は思うようにボールを前に運べず、トーレスが動き出したとしてもタイミングが合わない。仮にボールが出ても潰されてしまい、分厚い攻撃を構築するには至らなかった。

 鳥栖は監督が代わり新たな形を模索している段階であり、トーレスにゴール前で仕事をさせることが大きなテーマであるはずだ。2節の時点ではまだ最適な形を見出せていない印象だった。

 ビジャは次第に得点へと近づいていく。34分、最終ラインでボール動かすとダンクレーが持ち運ぶ。鋭い縦パスを送ると、前でカットしようとした鳥栖DFが触れず、ボールが流れる。そこでビジャが受けると、クロスバー直撃の右足シュートを放った。

 鳥栖の選手にカットされる可能性もあったが、ボールは通過してきた。相手のミスにつられて自分もミスしてしまうケースを目にすることがあるが、ビジャはパスが通ることを前提に準備し動いているため、相手のイレギュラーなミスにも惑わされることがなかった。

 その点で、移籍後初ゴールにして神戸の今季1点目はビジャだからこそ決められた一発とも言える。ラッキーな面はあったとはいえ、運だけで片付けることはできない。

 中盤でボールを回す神戸に対し、鳥栖の守備陣はビジャを気にしながらもラインを少し上げる。瞬間的にビジャはオフサイドの位置に立ったが、戻りながら弧を描くように走り出すとフィードが出てくる。相手に跳ね返されたボールは別の鳥栖選手に当たってビジャのもとへ。自分の前に転がるボールを発見した背番号7は、冷静にネットを揺らした。

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