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Jリーグ 5年前

磐田DF大南拓磨は『きっかけ』を無駄にしない。傷心に届いた声援、打ちのめされて芽生えたもの

text by 青木務 photo by Getty Images

退場した試合での出来事

 主力として試合に出場し続ければ、良い時も悪い時も経験するものだ。出始めの選手にしてみれば全てが新鮮で貴重な体験である。大南にとって、第3節・大分トリニータ戦は悪夢のような試合だっただろう。

 昇格組とはいえ確固たるスタイルが根付いたチームに大南は後手を踏んだ。13分には相手エースの藤本憲明を見失い、ゴール前に走られてワンタッチゴールを許す。自陣左のスペースにボールが出る直前、大南は首を振って中央の藤本の位置を視野に入れたはずだった。しかし、背走を余儀なくされ結局追いつくことができなかった。

 そして30分、カウンターで一気にスピードアップした藤本にまたも先手を取られると、並走しながら倒してしまい一発レッドで退場となった。

 スピードに自信はある。相手エースを野放しにしたつもりもない。完全フリーの状態で先制点を与えてしまったからこそ、その後はより高い集中力で臨んだ。それでも、厳しい現実を突きつけられた。10人となった磐田は前半のうちに同点としたものの、後半に勝ち越しゴールを献上し敗れた。

「自分のミスでやられたので、すごく責任を感じました」

 あの一戦を大南はこう振り返る。しかし、あることをきっかけに彼の胸中に強い想いが込み上げてきた。

「終わった後、『タクマコール』をしてもらって、支えてもらっているなというのをすごく感じました。悔しかったですけど、下を向いていられないという気持ちになりました。意識が変わったというわけではないですけど、責任感というか、自分のためじゃなくて支えてくれている人のためにやらなきゃいけないなという気持ちが芽生えましたね」

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