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Jリーグ 5年前

磐田DF大南拓磨は『きっかけ』を無駄にしない。傷心に届いた声援、打ちのめされて芽生えたもの

text by 青木務 photo by Getty Images

成功の喜びも失敗の重みもプラスになる

 北川とのバトルにも懸命に食らいついた。何度も動き直して視界から消えようとする日本代表との駆け引きについて、大南はこう語っている。

「常に裏を狙ったりとか、動き直しもたくさんやってくる選手なので、やりづらいなという気持ちで前半が終わって。それでも、北川選手にやらせなければ相手に勢いがつくことはないだろうなと思ってやっていました。そんな中で北川選手に決められてしまったので、そこはだいぶ痛かったですね」

 58分、味方のパスが相手にカットされる。大南はボールを運んでくる中村慶太に対応しなければならず、裏に侵入する北川に対しては無力だった。

 結局、試合は1-2で終わった。「下を向いてはいられない」と、大南は気丈に振舞っている。痛い敗戦であり、大南としても悔いの残るゲームだった。それでも、今回の静岡ダービーも彼にとって『きっかけ』となるはずだ。

 昨季終盤に出場機会を掴み、様々な相手とマッチアップしてきた。十分に戦える手応えを得つつ、試合ごとに課題を見つけてもいた。最終節の川崎フロンターレ戦ではラストプレーで家長昭博に突破を許し、スコアを動かされた。プレーオフに回ることになったチームはそこから1週間、気持ちを奮い立たせて東京ヴェルディとの決定戦に臨み、大南もJ1残留に貢献した。

 修羅場に身を置き、ヒリヒリするような戦いを経て自信も掴んだ。今季も主力を張る中で大分戦では一発退場を経験。J1の舞台が甘くはないことを肌で感じた。しかし、その後に芽生えた自覚と責任感を考えれば、打ちのめされたことで大南は一皮剥けたとも言える。

 成功の喜びも失敗の重みも、21歳にとって必ずプラスになる。なかなか波に乗り切れないチーム状況なだけに悠長なことは言っていられないが、大南の成長がジュビロ磐田に不可欠な要素であることは間違いない。

(取材・文:青木務)

【了】

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