「変革の必要はない」のか?
後半戦では故障者が続出。それに伴い、チームの組織が作り込まれていないことも露呈してしまった。サイドと前線にボールが渡るうちはいいが、組織守備で展開を寸断されたらすぐ手詰まりを起こしてしまう。アヤックス戦はそれで敗れたし、国内でもマンマーク気味な守備で当たられたアタランタには分が悪かった。
一方で守備のバランスは、若干歪なものになった。マンジュキッチがいる際は中盤まで戻ってボールを奪い返すことができる反面、相手のCBやボランチにプレッシャーをかけて展開を遅らせるような前線の組織守備は確立されていない。いつの間にか、カウンターにも脆いチームになっていた。
ロナウドの活かし方も、実は課題として残ってしまっている印象だ。33歳になっても落ちないパフォーマンスはやはり驚異的。そんな彼に自由に動いてもらって、ボールを集めてシュートを打ってもらうという形で活かすことはできた。ただその一方で組織のバランスをどう取るのか、最適解はなかなか見えてこなかった。
強いて言えばアトレティコ・マドリーを破り、この日のフィオレンティーナ戦でも見せた、エムレ・ジャンを最後尾に下ろす3バックを基本とした布陣が一番近いのかもしれない。「大きな変革の必要はない。質を上げていけば良いだけだ」とアッレグリ監督は試合後の記者会見で語った。そのために監督自身や、ファビオ・パラーティチSDらの強化部門はどういう構想を描いているのだろうか。
伊衛星TVスカイ・イタリアで解説を務めるダニエレ・アダニ氏は「ユーベがプレミアリーグに来れば3番手か4番手」と、欧州の頂点を目指すメガクラブとはまだ差があるというニュアンスでコメントをしている。来シーズン以降、これをどう埋めていくのか。CR7を引っ張ってきても、単純にチーム力の上昇とはいかないところが悩ましくもあり、また興味深いところである。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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