99年、名波浩。日本最高のMFはなぜ失敗に終わったのか? “ゴミクズ”とまで揶揄された苦悩【セリエA日本人選手の記憶(3)】

2019年04月23日(Tue)10時18分配信

シリーズ:セリエA日本人選手の記憶
text by 神尾光臣 photo Getty Images
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圧巻のレコバ。期待の反動は批判に

名波浩
ベンチで当時のスパレッティ監督(左)から指示を受ける名波浩(右端)【写真:Getty Images】

 また前にスペースがあれば、自ら推進してボールを前に運ぶことも求められる。つまりゲームメーカーとして長短のパスを操る名波にはスタイルの変更を意味するもので、すぐに対応できないのも当然であった。

 身体面でのスピードやフィジカルで見劣りする中、左足の技術を駆使して対応しようとしているのは見て取れた。ショートパスを交換できない分、プレスは自らのボールコントロールでかわし、味方はミドルパスで動かす。運動量も豊富なように見えた。そのあたりの努力は地元メディアのメディアにも見えていたようで、翌日の試合採点自体は5.5や6など悪いわけでもなかった。

 ただ1試合ごとのプレーの評価は著しく悪いわけではなくとも、継続してチームの勝利に響かなければ、やはり期待外れの烙印を押されてしまう。外国人選手にはそれ以上のものが求められている。とりわけヴェネツィアのファンは、前のシーズンに強烈なものを見せられていた。アルバロ・レコバの存在だ。

 前シーズン、インテルから出場機会を求めてレンタル移籍してきたウルグアイ人FWは、半年間足らずの出場で物凄い活躍を遂げていた。左足のキックの破壊力は凄まじく、フリーキックは直接だろうが間接だろうが高い確率でゴールに結びついた。19試合に出場し11ゴールと素晴らしい実績を上げ、クラブに残留をもたらしていた。

 そのレコバはレンタル期間が終了しインテルに戻ることになるが、ファンは当然彼の穴埋めを期待する。FWのレコバとはプレースタイルもプレーエリアも異なる名波に同様のものを要求するのも無理な話だが、期待の反動として失望と批判が大きくなるのもファン感情としては自然なところではあった。

 ともかく、名波の苦闘は続いた。異なる現実の中、持てる武器を駆使して対応している印象はピッチを見る限りしていたのだが、チームの成績不振でザンパリーニ会長が乱心を起こし、監督は4度も交代。その影響も重なってスタメンを取りきれない状態は続き、シーズンは終了した。ヴェネツィアは降格し、買い取りのオプションは行使されなかった。

 ヴェネツィアに移籍した時点で26歳。すでにプレースタイルが確立されているところに、言葉も学ぶ必要がある。その状態では、監督やコーチのコミュニケーションをとって戦術を理解するというのは困難だったことだろう。もっと若い時期にチャンスを得ることができていたら、もう少し違う結果になったのだろうか。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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