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Jリーグ 5年前

J1で最もモダンなトリニータ。計算された「擬似カウンター」、戦術を左右するGK高木駿【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

お手玉の上手いGK

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大分トリニータのGK高木駿【写真:Getty Images】

 サッカー選手のトレーニングは、サッカーをしているか走っているか。だいたいどちらかだから、見た目にもサッカー選手らしい練習になっている。藤原寿徳GKコーチの練習はちょっと変わっていた。ジェフユナイテッド千葉のGKコーチを務めていたとき、キャンプではGKたちが「お手玉」をやっていた。藤原コーチはテニスラケットでテニスボールを打ち込み、GKがセーブする練習もあった。GKが試合中にやるとも思えないボールリフティングの練習もしていた。

 神経系のトレーニングなのだが、慣れていないのでGKたちはなかなか苦労している様子だった。そんな中、高木駿はお手玉も難なくこなしていた。3つの球をジャグラーのように操っていた。器用なのだ。現在、大分ではその器用さが活きている。

 ポゼッションあるいは「擬似カウンター」において、GKの役割はかなり重要だ。つなげないGK、蹴れないGKでは務まらない。相手に寄せられたときにドリブルで抜くぐらいの足技も必要とされる。GKのクオリティを抜きにして、ポゼッションもカウンターもありえない。絶対的な数的優位を行使できるかどうかは、GKにかかっているのだからチーム全体の戦術を左右する存在といえる。

 GKを攻撃に組み込むのはリスクも生じる。しかし、リスクなしでは進歩もない。J3から右肩上がりにJ1の上位まで登ってきたのは、大分が相応のリスクを負ってきた結果だろう。

(取材・文:西部謙司)

【了】

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