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PSGの狂い始めた歯車。一冠どまりは「大失敗」、揺らぎだした巨大戦艦の行く末は…

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

フロント、強化、現場。歯車は狂い始め…

 つい先日も、欧州最大規模であるフランスのホテルチェーン、アコーホテルズとシャツスポンサー契約を締結。年間5000万ユーロ(約62億円)という魅惑の契約をとりまとめ、その発表の席で、目下、本拠地パルク・デ・プランスのネーミングライツ導入を画策中であり、ファイナンシャル・フェアプレー違反の懸念はないことをアピールしていた。

 しかし一部では、アル・ケライフィ会長は、以前はズラタン・イブラヒモビッチ、現在はネイマールらスター選手たちと直に深い関係を築く傾向があり、そのことで監督の影響力が及びにくい状況を作ってしまっている、という報道もある。

 実際会長は、移籍関係を取り仕切るスポーツ・ダイレクターのアンテロ・エンリケの続投を断言しているが、エンリケとトゥヘル監督の関係は決して良好ではない。その理由のひとつは、トゥヘル監督が自分のチームに求めている選手をエンリケが連れてきてくれないことだ。

 たとえば、監督が就任当初から求めていた中盤の底を安定させられる、現役引退したチアゴ・モッタの後継者のようなタイプの選手。今年の冬のメルカートでは中盤にアルゼンチン人のレアンドロ・パレデスを獲得したが、彼は『6番』タイプではないし、まだ十分に戦力になっていない。

 それなのに、即戦力であるMFアドリアン・ラビオのことは、契約延長を拒んだという理由で戦力外の飼い殺しにするといった、監督にとって手痛い制裁をフロント陣は敢行している。

 そして詳細はどうであれ、会長、スポーツ・ダイレクター、現場責任者である監督、この三者間の輪が乱れているということは、PSGに限らず、どのクラブにとっても成功を阻む要因となる。

注目の的であるエムバペ、ネイマールの去就については、来季2人ともPSGに残ることは「100%ではなく2000%確実」と会長は断言し、当人たちも来季もPSGでプレーすると言い切っていたが、レンヌ戦のあとネイマールが、「とにかく残りの試合に集中して、その後はコパ・アメリカ」とだけ言っていたのが少し気になるところだ。

 フランス杯に勝っていたとしたら、「まあ基本路線」のシーズンで終わっていたかもしれないが、最後のPKが外れたあの一瞬を境に、PSGという巨大戦艦は揺らぎだした。

 この夏、何かしらのテコ入れは必要となるだろう。

(取材・文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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