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日本代表 5年前

松田直樹が捨てたフラット3の理想。日韓W杯ベスト16につながった隠れたファインプレーとは?【日本代表平成の激闘史(8)】

シリーズ:日本代表平成の激闘史 text by 元川悦子 photo by Getty Images

定石を破ったトルシエ

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2得点を記録した稲本潤一(左)と柳沢敦【写真:Getty Images】

 18日のラウンド16の相手はトルコ。2位通過ならブラジルとぶつかっていただけに「これは僥倖だ」と感じた人は多かっただろう。実際、筆者も「8強に行けるかもしれない」と大きな期待を抱き、雨の宮城に乗り込んだ。

 しかし、トルシエは「勝っている時はメンバーを代えない」という定石を打ち破り、鈴木・柳沢の2トップを外して、ここまで出番のなかった西澤をFWに起用。少し下がり目の左に三都主アレサンドロを配置する新布陣を採用した。

 柳沢が首の痛みを訴えたのがきっかけと言われているが、一度も試していない形をこの大一番でトライするのは、あまりにも大きすぎるギャンブルだった。

 しかも「1次リーグ突破でどこか満足している様子が垣間見えた」とチーム関係者が証言したように、選手たちはどこか浮足立っていた。そのムードが災いして前半12分、中田浩二のパスミスからトルコがCKを獲得。これをウミト・ダバラにヘッドを決められる。

 そこから反撃に出なければいけなかったが、冷たい雨とバックスタンド中央の空席が選手たちの士気を下げたのか、どうも攻めの迫力が足りない。三都主のFKがクロスバーを直撃するなど決定機をものにできず、後半から出てきた鈴木や森島も仕事らしい仕事ができなかった。結局、伏兵の前に屈した日本は敗れ去った。

 若い市川や戸田らが号泣する姿は17年が経過した今も脳裏に焼き付いて離れないが、このときの日本代表はもう少し上のステージに行ける可能性が確かにあった。敵将のセノール・ギュネシ監督も「本当に苦しい戦いで、我々がほんの少し幸運だった」と語っていたのを考えても、戦い方が悔やまれてならない。

 この後、日本はワールドカップで2度、8強入りに挑んだが、失敗に終わっている。果たしてその高い壁を超えるのはいつなのか。この世代の選手たちが指導者になりつつあるここからが勝負なのかもしれない。

(文:元川悦子)

【了】

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