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日本代表 5年前

松田直樹が捨てたフラット3の理想。日韓W杯ベスト16につながった隠れたファインプレーとは?【日本代表平成の激闘史(8)】

シリーズ:日本代表平成の激闘史 text by 元川悦子 photo by Getty Images

「理想ばかり追っていたら勝てない」

 試合始まってみると、この日の日本のラインはベルギー戦より明らかに低い。「(宿舎の)葛城北の丸の風呂で守備陣みんなで話をしました。『悔いのないようにやろうよ。ワールドカップは結果を出すところだから臨機応変にやるべき』とみんなで共有したんです」と楢崎は述懐する。

 実際に口火を切ったのは松田。「フラット3の理想ばかり追っていたら勝てない。ライン下げよう」と言い出し、それに森岡や中田浩二らも賛同して、全員で現実的な戦い方を選択したのだという。

 それが奏功し、守りが安定。後半6分に決勝弾が生まれる。中田浩二のアーリークロスを柳沢がダイレクトで落とし、ゴール前でフリーになった稲本が右足を一閃。

 大会2点目を挙げた稲本もこれでブレイクしたが、柳沢のアシストも見逃せない。得点に至るディテールにこだわる男の真骨頂が具現化されたプレーだった。虎の子の1点を死守した日本は歴史的白星をついに手に入れた。

「当時の小泉純一郎首相がロッカールームに来たんです。僕らもすごい盛り上がってましたね」と楢崎が言うように、初勝利後のチームはお祭り騒ぎだった。彼らだけでなく、国民の熱気と興奮も最高潮に達する。

 その雰囲気が14日のチュニジア戦まで続き、その地・大阪は凄まじい盛り上がりとなる。試合は日本が押せ押せで、後半開始から入った地元・セレッソ大阪に所属していた森島寛晃が後半3分に先制。後半30分には最年少の市川のクロスを中田英寿が合わせて2点目をゲットし、2-0で連勝を飾る。日本は勝ち点7で首位通過。この晩は道頓堀川にはダイブする人々が続出した。

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