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日本代表 5年前

藤本寛也には全てが見えていた。初戦ベンチの悔しさ、W杯でピッチ上の“王”になった日【U-20W杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

自信を力に変えて2アシスト

藤本寛也
藤本寛也は練習から高精度のパスを次々に通していた【写真:Getty Images】

 21分の先制点は相手に負傷者が出て一時的に数的有利だったとはいえ、その穴を見逃さずに左へ展開し、左サイドバックの鈴木が高い位置まで上がってこれたからこそ生まれた。鈴木のクロスを相手がクリアしたこぼれ球をいち早く回収した藤本が、とっさの判断でダイレクトの浮き球パスを相手の最終ラインの裏に落とす。それに反応した宮代大聖が左足を振り抜いてゴールを決めた。

「ボールが来るなと思っていて、相手もカウンターの起点にしたいと狙っていて、(逆に)そこを狙おうと思っていて、(自分のところに)ボールが来た。そこは自信のある予測と判断で、ボールを取れた。最初はボールをワンタッチして落ち着かせようと思ったんですけど、相手が来ているのがわかって、あそこで取られちゃったら逆にカウンターを食らうので、とりあえずアバウトにGKとディフェンスラインの間にボールを入れて、そこでFWがうまく反応してくれればいいなと思って。そうしたら大聖があそこに反応してくれていました」

 2つ目のアシストとなった52分の2本続いたコーナーキックの場面でも、「ニアサイドが結構空いている」という事前のスカウティングで見つかった弱点を頭に入れながら、2本とも同じコースに蹴った。ヘディングシュートを決めた田川亨介も「もう1本来ると思った」と互いのイメージがシンクロした結果、ゴールにつながった。

 藤本の卓越したテクニックと、頭の中のイメージを具現化するプレービジョン、勝負どころを感じ取るセンス、大舞台にも動じないメンタル、さらには自らのプレーに対する自信やリーダーシップ……それら全てがU-20ワールドカップ初出場の試合で全て噛み合った。

「自分でも緊張しているのかなと思ったんですけど、いざ入ってみたらボールスキルとか、展開力とか、ゲームを読む力とかというのは自分の方があると思って。そういうのもうまく自信に変えていこうと、自分で決めていたんですけど、それが結構落ち着きにつながって。それがいいところでもあるので、自分にとっては『初戦』ですけど、いい試合展開になったのかなと思います」

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