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日本代表 5年前

藤本寛也には全てが見えていた。初戦ベンチの悔しさ、W杯でピッチ上の“王”になった日【U-20W杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「もっと強い相手とやれると考えるだけで面白い」

U-20日本代表
U-20日本代表は29日のグループリーグ最終戦でイタリアと対戦する【写真:Getty Images】

 昨年10月にU-19日本代表の一員として参加した今大会のアジア最終予選では、U-20ワールドカップ出場権を獲得した準々決勝のインドネシア戦の開始15分で左ひざを負傷。ベンチに交代を要求するサインを送った際は、ユニフォームで顔を覆い、悔しさから大粒の涙を流した。チームから離脱する直前に見た、左ひざを装具で固定する姿は痛々しかった。

 その後は長期離脱を強いられた。昨季終盤のJ1昇格プレーオフの会場で会った際には「来季の開幕には間に合うと思います」と話していたが、実際に約4ヶ月もの長期間にわたって公式戦のピッチから遠ざかることになる。そして復帰後も今季の東京ヴェルディではセントラルMFではなく、右サイドでの起用が続いていた。

 だが、自信は全く失わなかった。むしろ成長速度は上がっているかもしれない。ゆくゆくはもっと上のレベルで勝負できる潜在能力の持ち主であることに疑いはない。そして今、“ピッチ上の王”として君臨した司令塔は、ワールドカップの大舞台で輝きを増している。「もっとうまくなりたい」という意欲はとどまることを知らず、世界を相手にどこまでできるのか。藤本のモチベーションは高まるばかりだ。

「もっと強い相手とやりたいし、(第3戦の相手)イタリアは今日の相手(メキシコ)よりレベルが高いと思う。その先の決勝トーナメントに上がったらもっと強い相手とやれると思ったら自分の中でワクワクするし、もっと強い相手とやれると考えるだけで面白い大会というか、やっぱりワールドカップというのはいいなと思う。そこで自分をもっと成長させるために、下を向かずに、どんどん自分がうまくなることだけを考えてやるだけかなと思います」

(取材・文:舩木渉【ポーランド】)

【了】

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