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日本代表 5年前

藤本寛也には全てが見えていた。初戦ベンチの悔しさ、W杯でピッチ上の“王”になった日【U-20W杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

出番のなかった試合の修正点を…

 実はエクアドル戦の翌日、藤本はその試合での具体的な改善点を「これは書けないぞ…」と感じるほど具体的に事細かく指摘していた。その形はメキシコ戦で彼の話していた通りに表現されたので、もう書いてしまっても問題ないだろう。

「ボールサイドのセントラルMFが後ろに引いたら、逆サイドのセントラルMFはなるべく真ん中にいてあげないと。どちらかが外とか後ろに出たら、どちらかが中にいてバランスを保って、その空いたスペースにサイドハーフが入ってきたり、トップ下が入ってきたりというのはできたかなと、見ていて思いました。

(エクアドル戦は)セントラルMFがセンターバックの間に入ることが多くて、(齊藤)未月だったり(伊藤)洋輝だったり、2人とも真ん中に落ちることが多かったので、あれは本当はセンターバックの脇に落ちて、(センターバックを横にスライドさせて)サイドバックが高い位置を取って、サイドハーフを中に入れてというのが一番いいかなと」

 メキシコ戦での藤本は相手のシステム変更にも柔軟に対応しながら、2トップがプレッシャーをかけてくる場面ではセンターバック2人の左右の脇に入ってサポートし、ボールを前進させていく。左側に落ちれば、左サイドバックの鈴木冬一が高い位置をとり、左サイドMFの山田康太は藤本のいなくなった中央寄りのポジションに入って後ろからのボールを引き出す。右サイドでも似たような変化が現れ、まさに見方も相手も理想通りに動いていった。

「僕がセンターバックの脇に降りて、サイドバックに高い位置を取らせて、サイドハーフを中に入れて、そこで相手を困らせて、あとは自分が運びながらパスコースがどんどん広がっていく。そこで自分がミスしなければ。今日はミスをしないで縦パスを入れられたりしていたので、いい起点になれたかなと思います」

 セントラルMF、サイドバック、サイドMF、さらにセンターバックも加えた各サイドでの円滑なローテーションがメキシコの守備を混乱させた。そうなればどこにマークの薄くなる選手が出るのか、そこからどんな展開が生まれるのかも藤本の頭の中にはイメージが出来上がっていた。

「基本は(自分たちの)サイドバックが空くかなと思っていて、相手のサイドバックも結構困っていました。(メキシコは)たぶん中を締めてくるので、(右の菅原)由勢と(左の鈴木)冬一が高い位置を取って、そこで中にいた(山田)康太と(斉藤)光毅に預けたら、サイドバックの由勢や冬一が出てくる。その空いたスペースを使えれば、相手が、パズルみたいな形ではないですけど、どんどん動いていくので。うまく試合に入れて、チームの狙い通りにできて良かったと思います」

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