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日本代表 5年前

92年ダイナスティカップ。カズが覚醒した韓国撃破。日本に新たなストライカーが生まれたJリーグ開幕前夜【私が見た平成の名勝負(1)】

シリーズ:私が見た平成の名勝負 text by 藤江直人 photo by Getty Images

歴史を塗り替えた日本代表

 ユベントス戦で決めたゴールが、カズの進化を加速させた背景にはそうした事情もあった。迎えたダイナスティカップ。出場4ヵ国が総当たりのリーグ戦をまず戦い、上位2ヵ国が決勝に臨むレギュレーションのなかで、日本代表は8月22日の韓国代表との初戦をスコアレスドローで発進する。

 平成3年までの対戦のように、攻守で圧倒され続けた展開ではなかった。ボールを保持し、主導権をにじる時間帯が多かった内容に自信を得た日本代表は、中1日で行われた中国代表との第2戦を2-0で制する。ゴールを決めたのは福田正博と高木琢也だった。

 そして、再び中1日で行われた北朝鮮代表戦では、大量4ゴールを奪って快勝する。福田に続いて高木が2発を叩き込んだ後の74分に、国際Aマッチ通算10試合目にして待望の初ゴールを決めたのはカズだった。日本代表は堂々の1位通過を決めて、2位韓国との決勝戦へ進出した。

 後に見た決勝戦の映像では、いたるところに水たまりができるほどピッチ状態は最悪だった。キックオフ直前に集中豪雨に見舞われたためで、オフト監督は司令塔のラモス瑠偉を、ピッチが乾いてくる後半から切り札として投入することを決めた。

 そして、試合直前のミーティングで韓国代表のメンバー表を破り捨て、選手たちのモチベーションをアップさせた。曰く「過去は関係ない。新しい歴史を作れ」と。前半に先制されるも青写真通りに投入されたラモスのアシストから、FW中山雅史が83分に同点ゴールを決める。

 突入した延長戦の96分にもラモスのパスが起点となり、高木が大会得点王を確実にする勝ち越し点を押し込む。喜びすぎた隙を突かれ、直後に同点とされても試合の流れは譲らない。PK戦の最後にMF北澤豪(ヴェルディ)が豪快に蹴り込んで死闘に決着をつけ、歴史を塗り替えた。

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