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日本代表 5年前

日本代表、封じなければ惨敗も。サンチェス、ビダル、メデル…“チリ三大天”にどう挑むか【コパ・アメリカ】

日本代表は現地時間14日、コパ・アメリカ2019(南米選手権)のグループリーグ初戦となるチリ代表戦を迎える。大会連覇中のチリには、FWアレクシス・サンチェス、MFアルトゥーロ・ビダル、DFガリー・メデルと言う3人のリーダーがいる。2020年東京五輪世代を中心とした若き日本代表はどのように挑むべきか。(取材・文:河治良幸【サンパウロ】)

text by 河治良幸 photo by Getty Images

前線、中盤、最終ラインに構える将軍たち

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FWアレクシス・サンチェス【写真:Getty Images】

 14日(日本時間15日)に開幕したコパ・アメリカ。森保一監督が率いる日本代表はサンパウロでチリと対戦する。

「コパ・アメリカで2015、2016に優勝しているだけで、どれだけ偉大か分かる」と前日会見で森保監督は語ったが、その二大会とも決勝のピッチに立ってチームを引っ張っていたのがFWアレクシス・サンチェス、MFアルトゥーロ・ビダル、DFガリー・メデルだ。

 前線、中盤、最終ラインで主軸を担う、言わば”チリの三大天”とも言えるピッチのリーダーたちはマルセロ・ビエルサ、ホルヘ・サンパオリ、フアン・アントニオ・ピッツフィ、現在のレイナルド・ルエダにいたるまで、あらゆる監督の厚い信頼を得て来た。そのベースにあるのがチリの生命線である強度を高いレベルに維持させるハードワークであり、局面の厳しいプレーであり、勝負強さだ。

 チリ代表には二大会で優勝トロフィーを掲げたメンバーが多く残っているが、この3人を局面の攻防、ゲームコントロールともに封じていかないと、若い選手たちは完全にチリのペースに飲み込まれて、惨敗の憂き目を見ることになるだろう。

 チリは予想では4-3-3が濃厚とされるが、ビダルをトップ下で生かす4-3-1-2を用いることもあり、流れの中でも立ち位置を変えながら自分たちのペースに持ち込もうとしてくるため、あまりポジションごとのマッチアップにこだわらない柔軟なイメージと試合中の対応力がキーになる。

 ただ、基本的にはサンチェスは左ウィングを起点に前線の左ワイドを活動エリアとするため、仮に森保監督が3バックで入るとすれば、おそらく右で植田直通がマッチアップすることが多くなる。

 植田はサンチェスについて「本当にいい選手だし、チリとやると聞いて、その選手が僕も頭に浮かびました。映像見たりして出てきてくれれば僕もすごくうれしい」と語る。

「動き出しに関してはやっぱりトップクラスだし、そういった相手とできるのはなかなか無い経験なので、それを抑えるために自分がどういう動きをしなきゃならないのかという頭の整理をして、それに対応していきたいなと思います」

チリの強度を圧倒的に高めるビダル

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MFアルトゥーロ・ビダル【写真:Getty Images】

 日本としてはディフェンスラインが組織でサンチェスやエドゥアルド・バルガスをチェックしていくことも大事だが、結局は局面で自由を与えないことが後手を踏まないためのポイントになる。

 植田は1対1に絶対の自信を持つが「ベルギー自体はそこまで動き出しがいい選手っていうのは少ない」と語り、サンチェスの動き出しには特に注意する必要があると考えているようだ。

 中盤でチリの強度を圧倒的に高めてくるのがビダルだ。局面のデュエルにめっぽう強く、機動力も高い。おまけにチャンスとなればバイタルエリアや時にペナルティエリア内まで侵入して球際の強さを発揮してくる。

 そのビダルと多くの場面で対峙するのはボランチの選手たち。合流前のJリーグで負傷した渡辺皓太が別メニューでスタートした状況で、柴崎岳を軸に相棒が左利きの中山雄太になるのか、松本泰志になるのかは分からないが、チリに主導権を取らせないためには絶対的に封じるべき相手になる。中山雄太はビダルとの対戦をこう語る。

「個人の戦いはそれほど意識しすぎてはいけないけど、こういう舞台でビッグクラブでやっている選手に対してチャレンジするだけの立場なので、しっかりとチャレンジに行きたい。自分の持てる力をしっかりと全て出し切って、個人の勝負ではなく、しっかりとチームに貢献できるように頑張りたいなというふうに思います」

まさにデュエルの猛者、“闘犬”メデル

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DFガリー・メデル【写真:Getty Images】

 一方で、もう一人のスタメン候補である松本泰志は「頑張って止めます(笑)。世界レベルを止めることによって自分の自信にもなります」とシンプルに意気込みを語る。

 ビダルの場合は個人のデュエルはもちろん、周囲の動きにも影響をもたらす選手であり、完全な1対1よりは中盤での流れでボランチの二人がいかに周囲と良い距離感を維持しながら、プレースペースを奪っていくかということも問われる。それでも局面で生じるデュエルでやられてしまうと完全に穴があくので、組織として見ながら要所でデュエルにひるむことなく挑んでいくことが求められる。

 ガリー・メデルは「ピットブル(闘犬)」の異名もとる、まさにデュエルの猛者であり、171cmというサイズながら鋭いアプローチと容赦ないタックルでアタッカーを止め、同時に戦意を喪失させる。

 時にはファウルも辞さないチリを象徴的なディフェンダーに勝負を挑むのは前田大然、上田綺世、岡崎慎司というFW陣だ。その中でもスピードを武器とする前田大然はいかにメデルの牙にかからずフィニッシュに持ち込めるかがゴールに直結する。

「スピードでどれだけ通用するかっていうのは試したい」という前田だが「体の強さも自分の持ち味でもあると思うので、相手を吹っ飛ばすくらいに気持ちで頑張りたい」と語る。

 チリはそのメデルと長身のマリパンでセンターバックのコンビを組むと見られるが、前田がスピードとコンタクトプレーでの負けない強さをどう生かしてディフェンスを破れるかはキリンチャレンジカップの永井謙佑に大きな刺激を受けたというアタッカーにとって国際舞台での試金石になりそうだ。

(取材・文:河治良幸【サンパウロ】)

【了】

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