中島翔哉は日本代表のメッシ・ロール。個に依存した攻撃、「奪って運ぶ」課題は残されたまま【西部の目】

キリンチャレンジカップ2019の日本代表対パラグアイ代表戦が5日に行われ、日本が2-0で勝利を収めた。大迫勇也、南野拓実、堂安律、中島翔哉の前線4人が揃い踏みした前半は、2点をあげて結果を残したが、彼らが退いた後半は攻撃が停滞。依然として前線の個に頼る課題は残されたままだ。(文:西部謙司)

2019年09月06日(Fri)10時00分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
Tags: , , , , , , ,

進歩は見られなかった日本代表

0906nakajima_getty
パラグアイ戦に先発出場した中島翔哉【写真:Getty Images】

 日本代表はミャンマー戦へ向けて容赦のない姿勢を打ち出していた。カタールワールドカップへの第一歩となる2次予選の初戦を5日後に控え、森保一監督は大迫勇也、南野拓実、堂安律、中島翔哉のセットを先発させた。

 この4人を並べれば何ができるかはすでにわかっているが、ミャンマー戦に向けてチューニングが必要と判断したのだろう。4人はこれまでどおり見事な個人技と連係を披露した。ただ、できることを確認したにすぎず、チームの進化を感じさせるものではない。

 中島の無双ぶりも変わらず。2ゴールをセットアップした。これまでよりも守備意識が高くなったように見えたのはプラス材料だが、2トップがかなりパラグアイのDFにプレッシャーをかけていたのでそのおかげかもしれない。

 前半のプレーは良かった。しかし、進歩は見られなかった。

 GKを参加させてのビルドアップは無難ではあったが、とくに良くなったという印象もない。試合の流れを変えるうえで日本が身につけるべきことだが、パラグアイ戦ではそこまで押し込まれることもなく、進捗の具合はよくわからなかったというほうが正しいかもしれない。

 後方ビルドアップのボールの「出口」としては、吉田麻也と冨安健洋からのロングパスが何回かあったが、攻め込みの起点となるサイドバックからの展開にはっきりしたものは見えなかった。左サイドに関しては明確にある。しかし、非常に特殊な形なので正直なんとも言い難い。要は中島がいればできるが、いなければできないという代物だからだ。

中島翔哉にしかできない芸当

 ボールの出口となるハーフスペースで吉田や橋本拳人がボールを持つ、あるいはサイドの高い位置にいる長友佑都が起点になる。その後はハーフスペースの中島に預ける。中島はかなり深い位置に引いて受けるケースもあった。いずれにしても、そこから中島が相手守備陣の密集にドリブルで突っ込んで剥がすか、空いた味方へ長めのパスを供給して崩す。

 中島でなければできない芸当であり、バルセロナにおけるメッシと同じ扱いといっていい。バルサでメッシがいないとき、他の誰かがメッシの役割をするわけではない。それと同じで、中島ありきのアプローチであり、ここまで個に依存したアプローチは現代のサッカーでは珍しい。

 後半に中島が交代でいなくなると、前半に見せた攻撃の迫力は失われた。中島がいないと南野が消えてしまうのはアジアカップと同じである。中島あってのカルテットという性質も従来と変わりない。

チームの課題は残されたまま

 ミャンマー戦への調整だけでなく、いくつかの新しい試みもあった。前半は橋本を柴崎と組ませた。橋本は落ち着いたボール捌きと持ち前の球際の強さを発揮し、十分やれる手応えはつかめたと思う。

 後半は冨安を右サイドバックに起用し、久保を右サイドに置いた。

 冨安のサイドバックは無理ではないが、酒井のバックアップならば、今回招集されていない室屋成のほうが上だろう。冨安は所属のボローニャでも右サイドで起用され始めたので、経験を積んでいけばこのポジションでも化ける可能性はあるが、今のところセンターバックのときほどの凄みはない。

 久保建英は大器の片鱗は見せたものの、良いプレーもミスもあり、本人も言っていたようにシュートするなら決めなければならない場面もあった。守備も頑張っていたが簡単に外されるケースもあり、まだ向上するだろうフィジカルとともに課題を残している。

 永井謙佑はニアゾーンをとれるスピードがあり、大迫とは違ったタイプのトップとしての能力は見せたが、インパクトは2ゴールの前回には及ばず。板倉滉、安西幸輝も引き続き同じポジションでの起用であり、ここから出場時間を延ばしていけるかどうかだろう。

 70分をすぎて日本が構えて守備をするようになると、自陣で奪ってから運ぶ段階でミスが出ていた。システマティックに、きれいにボールを前に出すことが必ずしもできておらず、すでに退いていた大迫や中島の個のキープ力に依存している現状を露呈していた。

 一方、大半の選手が欧州から集まったにしてはコンディションに問題はなさそうで、調整は上手くいっているように見えた。ミャンマー戦への調整と、将来のためのいくつかのテストができただけでも良かったと思う。

 チームの課題は以前から積み残したままだが、まとまった練習時間がとれるまでは一気に解決するのは難しい。どの国の代表チームも似たような問題を抱えている。それだけに集まっただけで共有できるものがどれだけあるかが問われているわけで、新たに共有すべきものがあれば、それをできるだけ短時間に効率よく浸透させることが勝負になる。その点ではスタッフ含めての総力戦だ。その成果は予選を通じて表れてくるものと期待したい。

(文:西部謙司)

【了】

新着記事

↑top