日本代表、南野拓実が”呆然とするしかなかった”5年前。因縁の地・ミャンマーで苦い過去を払拭へ

日本代表は10日、2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選の初戦でミャンマー代表と対戦する。一時はクラブでも代表でも苦しい時間を過ごしたが、今季はクラブですでに6得点を挙げるなど、好調を維持。期待のかかる背番号9が、重要な初戦を前に決意を語っている。(取材・文:元川悦子【ミャンマー】)

2019年09月10日(Tue)10時00分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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ミャンマーは因縁の場所

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日本代表の南野拓実【写真:Getty Images】

 森保一監督率いる日本代表にとって重要な戦いとなる2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選。その初戦となるミャンマー戦が10日、ついにキックオフされる。前日会見で「明日のスタメンはコンディションのいい選手を起用したい」と語った指揮官だが、常日頃から手堅い采配を貫く人物だけに、5日のパラグアイ戦の先発メンバーの大半を据えるはずだ。

 となると、攻撃陣は1トップに大迫勇也、2列目には堂安律、南野拓実、中島翔哉という常連組が陣取る形になるだろう。ある程度、守備に人数を割くと見られる相手をこじ開けるべく、前線カルテットはピッチや気象条件など環境を考えつつ、多彩な仕掛けを意識すべきだ。

 上記の4人が予選の頭からフル稼働するのは初めてだが、過去2度のワールドカップを逃してきた南野は期する思いがあるはずだ。19歳で2014年ブラジル大会の予備登録メンバー入りした男も間もなく25歳。5年半の月日を経て、ようやく自身初の予選を迎えることになる。「チームの勝利は一番ですけど、自分が試合に出たらゴールでチームに貢献したい」と本人は特に構えることなく、普段通りのフォア・ザ・チーム精神を前面に押し出していくつもりだ。

 加えて言うと、ミャンマーという国は5年前の2014年AFC・U-19選手権で世界切符を逃した因縁の場所。準々決勝・北朝鮮戦のPK戦でキャプテン・南野は痛恨のミスを犯した。「悔しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいです。PKも自分が決めてたら勝ってたと思う。すごく申し訳ないです」と当時のエースは呆然とするしかなかった。

「あのときの気持ちは今は全く関係ない。試合場所も違うし、ホントに全然別の国みたいな感覚を持ってます。もちろんいい思い出ではないですけど、僕らがチャレンジャーの気持ちをしっかり持って試合にのぞめればいい」と背番号9をつける男は過去とキッパリ決別し、前だけを見据えている。

 当時はまだセレッソ大阪の一員だった彼もすでに欧州6シーズン目。今季はUEFAチャンピオンズリーグ本戦に主力FWとして参戦する。ハイレベルの経験値と自信を胸に10日夜、トゥウンナ・スタジアムのピッチに立つことになる。

「『サッカーの本質』をしっかり見つめ直す」

 9月8、9日のヤンゴンでの現地調整では連日土砂降りの雨が降ったが、本番もスコールが来るのは確実だ。すでに水を吸ったグランドは想像以上に柔らかく、日本らしいパスワークや高度なコンビネーションを駆使したサッカーは困難だと言わざるを得ない。

「イレギュラーなバウンドだったり、1対1の場面でつねに最悪の状況を予測してプレーするというのは、1つの重要なポイントかなと。予想外のことが起きて失点するとか、ケガにつながるとか、選手として嫌なこともつねに頭に入れながらプレーしないといけないと思います。こういう難しい環境下の試合こそ、単純に相手との1対1に負けないとか、ゴール前で体を張るとか、『サッカーの本質』をしっかり見つめ直してプレーすることが大事になる。足先だけでプレーするんじゃなくて、泥臭くゴールに向かうような戦いをしたい」

 南野はやるべきことをしっかりと頭に入れている。実際、豪雨に見舞われた場合、中盤省略シンプルなサッカーにシフトする可能性も大いにありそうだ。

 そうなったとき、最前線には収められる大迫がいる。が、たった1人では相手もマークしやすくなり、つぶされるリスクも高まるだろう。南野は大迫をしっかりとフォローし、守備陣との競り合いのこぼれ球に鋭く反応して、ゴールを狙うような仕事が強く求められてくる。ルックスこそ爽やかなイケメンではあるものの、彼のゴールへの執着心と負けん気の強さは頭抜けたものがある。足を止めずにボールに食らいつくようなプレーも得意だ。その強みを今こそ発揮してほしい。

背番号9に託されたタスク

 こうしたアプローチを繰り返してゴールという結果を手にできれば理想的なシナリオだ。森保ジャパンでは新体制発足となった昨年9月のコスタリカ戦から3戦連続4ゴールという華々しいスタートを切ったが、今年1月のアジアカップではゴール欠乏症に陥った。再三の決定機を外し続け、日頃はメディアに対しても真摯に対応する彼が無言になるほどメンタル的に厳しい状態に置かれていた。

 決勝・カタール戦でようやく大会初得点を奪ったものの、日本はまさかの苦杯で準優勝。その後はザルツブルクでも出場機会が減り、代表でも得点感覚が鈍りがちになるなど、一時の勢いがトーンダウンした印象も強かった。

 しかしながら、今夏の欧州新シーズン開幕後はすでに公式戦6ゴールをマーク。今回の2次予選への重要なテストマッチとなったパラグアイ戦でもゴールを決めている。

「今シーズンではチームでもいい形でゴールに関わるプレーをイメージできている。それを代表にも持ってきたかったので、パラグアイ戦でできてよかった」と本人も自信を取り戻した様子。フィニッシュの鋭さを研ぎ澄ませた状態で迎える今回のミャンマー戦は、自ずから得点への期待が高まってくる。

 2次予選を目前に控えた南野は、こう語気を強めた。

「アジアカップでも感じましたけど、こういう試合は何よりも先制点が大事。苦しんだあの経験を生かしていきたいし、しっかり勝ち切って次に行きたいです」

 新天地へ移籍し輝きを取り戻しつつある香川真司や、18歳の新星・久保建英といった同じポジションのライバルも控えている。その面々との明確な違いを彼は示せるのか。因縁の地で点の取れるアタッカーであることを実証し、最高の形で2次予選をスタートさせること。それが、今回の背番号9に託されたタスクだ。

(取材・文:元川悦子【ミャンマー】)

【了】

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