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冨安健洋は日本代表のファン・ダイク? まさに鉄壁の20歳、 データが示す絶大な貢献度

text by 編集部 photo by Getty Images

冨安健洋
冨安健洋【写真:Getty Images】

【ミャンマー 0-2 日本 カタールワールドカップ・アジア2次予選 第1節】

 日本代表は10日、2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選の第1節でミャンマー代表と対戦し、2-0で勝利を収めている。

 激しい雨がピッチに降り注ぎ、ボールがうまく転がらないといったコンディションの中、日本代表は16分にMF中島翔哉が右足を振り抜いて先制ゴールを奪うと、その10分後にはMF南野拓実がMF堂安律のクロスに頭で合わせて追加点。後半はゴールネットを揺らすことができなかったが、試合はそのまま終了し、森保ジャパンはアジア2次予選を白星でスタートさせることに成功した。相手が格下であったとはいえ、アウェイで勝ち点3を奪ったことは大きな結果である。

 これで日本代表は9月シリーズを2戦2勝で終えている。攻撃陣が2試合で4得点を奪ったことも評価できるが、守備陣に目を向ければ無失点とこちらも申し分ない結果を残している。そのDF陣の中でひと際輝きを放ったのが、冨安健洋だと言えるのではないか。

 パラグアイ戦に引き続き、ミャンマー戦でも先発出場を果たした背番号16は、劣悪なピッチコンディションの中でも安定したプレーを披露。この日の日本代表は攻める時間が多く、ほぼ敵陣内でボールを保持していたが、冨安はその間も集中力を切らさず。相手のクリアボールに対し常にミャンマーの選手より先に動き出してボールを回収し、日本代表の攻撃へと流れを引き戻す。このプレーは幾度となく発揮されていた。

 また、2CBの相棒を務めていた吉田麻也のカバーリングも忘れず、背後のスペースを的確に埋める。危険な場所を常に把握しながら、ボールの行く先を素早く認知して動き出すその能力は、やはり高い。そういったことを改めて世に証明するかのような、そんなゲームであった。

 冨安はこの試合でチームトップとなる95本(成功率は90.5)のパスを成功させており、こぼれ球奪取数3回、シュートブロック2回、クリア数3回を記録するなど守備面での貢献度は絶大だった。また、ミドルサードでのプレー数もチーム1位となる126回を記録しており、このデータからも幅広いエリアを的確にカバーしていたことがわかる。

 CBはボールにアタックしに行くのか、相手選手との距離感を保ちながら時間を稼ぐのか、味方選手のカバーリングに入るのかという様々な判断をボールが出た、あるいは出そうなタイミングで瞬時に決めなければならない。この判断を間違えると失点の確率は高くなり、かといってそこから修正しようと試みても難しいのが事実。そのため、CBはそうした頭の回転の速さが求められるが、冨安はその判断力も申し分ない。また、CBはミス一つが命取りになるポジションでもあるが、決定的なボールロストやパスミスなどが少ないのも背番号16の魅力的なポイントだ。

 いま、世界で最も高い評価を得ているCBと言えば、オランダ代表のDFフィルジル・ファン・ダイクであると見て間違いないだろう。強さ、高さ、巧さ、速さのすべてが揃う世界No.1 DFは昨季にリバプールのチャンピオンズリーグ制覇に大きく貢献するなど、ワールドクラスの輝きを放った。観ている誰もが感動するような守備を披露し、圧巻の存在感を光らせたのだ。

 そんなファン・ダイクのプレーを見て抱くのが「安心感」である。「すごいな」「うまいな」といった感情ももちろん芽生えるが、一番はやはりこれだろう。オランダ代表DFとオフェンスの選手が対峙した時、なぜか「大丈夫だ」という気持ちが生まれるのだ。

 そして、パラグアイ戦、ミャンマー戦での冨安のプレーは、まさにそんな「安心感」を抱くことができた。その「安心感」を背番号16は裏切らない。当然オランダ代表DFのレベルに追いついているとまではまだ言えないが、日本代表の中のファン・ダイクのような存在にはなれていると言えるのではないか。

 CBとして申し分ないポテンシャルを発揮している冨安だが、所属するボローニャでは右サイドバックも務めるなど新たな可能性を見出している。この成長がどこまで続くのか。このような選手が出てきたことを、日本代表は幸運だと言わざるを得ない。

【了】

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