「久保建英はウーデゴーの二の舞に…」は見当違い。ノルウェーの神童、覚醒を遂げた3つの変化とは?

16歳でレアル・マドリーと契約したマルティン・ウーデゴーは「ノルウェーの神童」と呼ばれ、世界の注目を集めた。すぐに活躍とはならなかったが、レアル・ソシエダでプレーする今季は、チームを牽引する活躍を見せている。20歳となったウーデゴーが飛躍を遂げた背景を、関係者の評価などを交えて紐解いていきたい。(取材・文:鈴木肇)

2019年10月31日(Thu)10時00分配信

text by 鈴木肇 photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , , , , ,

忘れ去られつつあるノルウェーの至宝

1031odegaard1_getty
今季はレアル・ソシエダでプレーするマルティン・ウーデゴー【写真:Getty Images】

「ウーデゴーの二の舞にならないように」

 今年6月に久保建英のレアル・マドリード移籍が決まったあと、ツイッターではこのようなつぶやきが散見された。

 マルティン・ウーデゴー。今から4年前、2015年冬の移籍市場を賑わせた神童である。2014年4月にストロムスゴッセの一員として15歳の若さで母国ノルウェーのトップリーグにデビューし、同年8月にはフル代表のキャップを記録(いずれも最年少記録)。欧州のビッグクラブからこぞって熱視線を浴びるなか、最終的にレアル・マドリーと契約を結んだ。

 大きな期待を背負ったウーデゴーだったが、待っていたのは厳しい現実だった。トップチーム定着はおろかカスティージャにも適応できず、チーム内で孤立していたとも言われている。2017年にスペインを離れてオランダのヘーレンフェーンにレンタル移籍してからは、このノルウェー代表レフティーの名前をメディアで目にする機会は減っていった。

 だが、プレーの場をエールディビジに移してからのウーデゴーは、その才能を発揮する。昨シーズンにプレーしたフィテッセでは攻撃の中心として躍動。アシスト数10、チャンスクリエイト数110、ドリブル成功数87はいずれもチーム最多で、フィテッセのシーズン最優秀選手に選出された。にもかかわらず、その活躍ぶりはメディアではほとんど取り上げられなかった。

 今夏にレアル・ソシエダとレンタル契約を結んだときも、それほど大きなニュースにはならなかった。日本そして海外のサッカーファンの間では、ノルウェーの至宝の名前は忘れられつつあったのかもしれない。

飛躍を裏付ける関係者のウーデゴー評

 だが、ウーデゴーは過去の選手では決してなかった。

 スペインリーグ開幕から中盤の一角としてレギュラーに定着し、第10節終了時点で2ゴール3アシストを記録。第2節のマジョルカ戦で決勝点を挙げると、第4節のアトレティコ・マドリー戦では先制点をたたき出して強豪撃破に大きく貢献した。

 そして世界に驚きを提供したのが、第6節のアラベス戦で魅せたアシストだ。ミケル・オジャルサバルの先制点をお膳立てしたスルーパスは、文字通り相手の守備陣を切り裂いたスーパープレーだった。

 こうした活躍を受けて、リーガはウーデゴーを9月の月間MVPに選出した。ソシエダへのレンタル期間は2年だが、レアル側は早ければ来年1月にもウーデゴーを戻すのではないかと言われている。現在のスペインリーグを盛り上げている選手のひとりであることは間違いない。

 では、ウーデゴーの飛躍にはどんな背景があるのか。ノルウェーの関係者によるウーデゴー評を読んでいくと、いわゆるサッカーIQがレベルアップしたことに気づく。

 ノルウェー代表ラーシュ・ラーゲルベック監督は「以前の彼は自分と最も近くにいる味方とプレーを構築することが多かった。だけど今では攻守両面においてボールの持たない場面でのプレーが良くなった」とコメントする。

 同代表アシスタントコーチのペール・ロアール・ハンセンも「かつての彼のパスは単に受け手と出し手の関係だけで完結していた。それが今では3人目の動きも意識したボールを供給できるようになった。それに、オフ・ザ・ボールの動きが格段に良くなったのも見逃せない点だ。ボールを保持していない時のプレーがレベルアップしたことで、以前よりも完成された選手になった」と話している。

 ウーデゴー自身も「前よりもプレーの幅が広がったよ。試合中はピッチの遠くを見るようになった。相手からすれば予測しづらくなったと思う」と自らのプレーを分析。先述したアラベス戦のロングスルーパスは、まさにウーデゴーの成長を象徴するプレーだったと言える。

フィジカルの向上によるプレーの変化

1031odegaard2_getty
ノルウェー代表でプレーするマルティン・ウーデゴー【写真:Getty Images】

 サッカーIQのほかにもうひとつ、現在のウーデゴーを語るうえで重要なポイントがある。フィジカルの向上だ。

 今年9月、ウーデゴーは自らの肉体美をインスタグラムに投稿。見事に鍛え抜かれたその身体には約10万の「いいね」が付いた。そしてその筋肉が単なる飾り物ではないことを証明している。

 ノルウェーのテレビ局『TV2』のイェスパー・マティセン氏は2018年12月、フィテッセで3試合連続ゴールを決めたウーデゴーを「フィジカル面で大きく進化した。以前よりも強く、そして速くなった印象だ」とその変化に目を見張った。

 身体面で成長したことで、守備において大きくレベルアップした。ラーゲルベック監督は「ボール奪取する能力が向上した。接近戦に顔を出す場面も多くなったと思う」とディフェンス面の成長を評価。確かに、守備に奔走し、相手から強引にボールを奪取するその姿は、かつてのウーデゴーには見られなかった。

 運動量が増えた点も大きい。今シーズン初得点を挙げた先述のマジョルカ戦では、30度を超える暑さのなかで走行距離12.2kmを記録してチームメイトを驚かせたという。スペイン紙『アス』によると、ソシエダのトレーニングでは練習場に最初にやってくるのがウーデゴーで、練習場を最後にあとにするのもウーデゴーだそうだ。

全試合にフル出場。「練習するのが好きなんだ」

 ウーデゴー自身も「個人でトレーニングを積んでいる。たくさん練習するのが好きなんだ。1試合フルでプレーできるために、出来る限りのことをやっている」と語っている。専属で栄養士もつけており、コンディション管理に対する意識も高い。なお、9節終了時点で全試合フル出場を果たしているのはソシエダではウーデゴーだけである。レアル加入当時にルカ・モドリッチから「身体が出来ていない」と指摘されたが、ひ弱な面影はもはやどこにもない。

 コミュニケーション面でもまったく問題ないようだ。かつては「スペイン語が話せない」とメディアで揶揄されていたが、オジャルサバルによるとウーデゴーのスペイン語能力は「とても高い」そうだ。ウーデゴーと同じく今シーズンからソシエダに加入し、まだスペイン語を十分に操れないアレクサンダー・イサクをウーデゴーが通訳としてサポートすることもあるという。

 当面の目標については「ソシエダの一員として欧州カップ戦の出場権を獲得したい」と話すウーデゴー。レアル復帰が噂されるが、出場機会がある程度保証されているソシエダでのレンタル期間を全うしたほうが長期的には良いのかもしれない。つい忘れがちになってしまうが、ウーデゴーはまだ20歳なのである。

(取材・文:鈴木肇)

【了】

新着記事

↑top