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日本代表 4年前

日本代表、久保建英ら不在はピンチかチャンスか。大きく変わる攻撃陣、その人選は?

日本代表は14日に2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選・キルギス戦を戦う。久保建英、堂安律らがU-22日本代表に招集されたため、これまでとは異なるメンバー構成となることが予想される。33歳の長友佑都は「若ければ若いほど背負っている爆弾は大きい」と神妙な面持ちで語る。(取材・文:元川悦子【キルギス】)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

キルギスは想像以上の寒さと劣悪なピッチ環境

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久保建英はU-22日本代表に選出された【写真:Getty Images】

 9月の初戦・ミャンマー戦を皮切りにモンゴル、タジキスタンと、2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選3連勝と好スタートを切っている日本代表。現時点でグループ2位につけているキルギスと敵地で対峙する14日の第4節は、前半戦の大きな山場と言っていい。実力的には格下だが、アウェー戦はさまざまな困難がつきまとう。やはり楽観は許されない。

 11日未明にキルギス・ビシュケク入りし、同日午後に初練習を行った森保一監督と長友佑都、吉田麻也ら13人の選手たちも、想像以上の寒さに驚いていた。この日は16時時点で気温5度を切る状態。陽のある時間帯にもこの低温なのだから、キックオフ時間の17時15分以降はもっと冷え込みは厳しくなるはず。橋本拳人が「夜中に着いたんですけど、手がかじかむくらい寒くてビックリしました」と話したが、特に国内組は激しい気温差との戦いを強いられそうだ。

 加えて言うと、試合会場のキルギス国立競技場(正式名称はドレン・オルムザコフ・スタジアム)の劣悪な環境も要注意。ピッチは芝よりもクローバーや雑草の方が多いくらいで、土がむき出しになっている箇所がいくつもあったのだ。

 今回、井原正巳の持つ日本代表歴代キャップ数2位の122試合に並ぶ見通しの長友は「もうそういうのは慣れてるし、楽しいじゃないですか。自分が試されるというか」と開き直っていたが、アジア予選経験の乏しい選手は戸惑いを覚えるのではないか。キルギスが1月の2019年アジアカップで韓国・中国と互角の勝負を演じたことも含めて、懸念材料は少なくないのだ。

久保建英と堂安律不在の攻撃陣の人選は?

 難敵を倒すうえで重視しなければならないのが攻撃陣だ。10月シリーズに続いて絶対的1トップ・大迫勇也が招集見送りになっているうえ、森保ジャパン常連の堂安律と久保建英の若い2人がU-22日本代表優先となったことで、今回はアタッカー陣の構成が大きく変わる。新たな構成が機能するか否かは大きな注目点と見ていいだろう。

 まず最前線だが、モンゴル戦で結果を出した永井謙佑を置くか、タジキスタン戦でゴールを決めた鎌田大地を入れるか、それとも復帰組の鈴木武蔵を起用するかは判断の分かれるところ。

「それぞれ特徴が違うんで、自分らしさを忘れずにやりたい」と鈴木は強調したが、森保監督もキルギスの出方を踏まえながら方向性を定めることになるだろう。3人はいずれも所属クラブで好調をキープしているだけに、選択は難しくなりそうだ。

 2列目は、森保ジャパン最多得点者の南野拓実のトップ下スタメンが確実。指揮官の信頼が厚い左サイド・中島翔哉もクラブでの活躍度に関わらず先発するだろう。右サイドも序列的には伊東純也がファーストチョイスだが、彼と南野はクラブでリーグ戦とUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の超過密日程を強いられていて、フル稼働はかなり厳しい。となれば、指揮官も選手交代をうまく使おうと考えるはず。

 中島不在の1月のアジアカップでスタメンを張りながら最近は出番激減を余儀なくされている原口元気、10月シリーズから復帰した浅野拓磨らにもチャンスが与えられるのではないか。

若い選手は「伸びしろ爆弾」を背負っている

 今回、出番を得た面々の中で強烈インパクトを残すのは一体、誰なのか…。その出来次第で今後の代表の生き残りの行方が決まるといってもいいほど、キルギス戦のパフォーマンスは大きな意味を持つ。というのも、堂安、久保、菅原由勢、前田大然といった欧州で結果を出しているU-22世代の若手が、年長者たちの座を虎視眈々と狙っているからだ。

 長友も11月6日のCL・レアル・マドリー戦でハットトリックを決められた18歳の新星、FWロドリゴを引き合いに出しながら「若ければ若いほど伸びしろ爆弾といいますか、背負ってる爆弾がデカいんですよね」と神妙な面持ちで語っていた。その爆発力を秘めているから、森保監督も堂安や久保をここまで重用してきたのだろう。

 仮に彼らがいないキルギス戦で原口や伊東、浅野ら年長者たちが不発に終わったら、2020年突入後は世代交代の波が一気に進むことも考えられる。そのくらい若手の追い上げは著しい。2018年ロシアワールドカップ16強戦士の原口も、今季CL参戦中の伊東も、UEFAヨーロッパリーグ経験中の浅野も決してウカウカしてはいられない。それは南野や中島にも言えること。彼らが「絶対に必要な存在」であることをキルギス戦で示せれば、カタールへの道は開けてくるはずだ。

「アジアカップ予選、ワールドカップ本大会のような長期の大会を、限られた選手だけで戦い抜いて結果を出すのは難しい。層の厚いチームは最後に結果を出せる。今回、チームの層の厚さを示すとともに、層の厚さを増す機会にできればいい」と森保監督も語気を強めている。

 20代半ば以上のアタッカー陣が底力を示してくれれば、この先の日本代表は前向きな方向に進む。今回A代表に名を連ねている選手たちには、堂安・久保不在の状況をプラスに変えるべく、ゴールという結果に強くこだわってほしいものである。

(取材・文:元川悦子【キルギス】)

【了】

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