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再考すべき柴崎岳の起用。日本代表のシステム上限界…影を潜めるプレーメーカーという役割

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

柴崎岳
ベネズエラ戦で先発フル出場を果たした柴崎岳【写真:田中伸弥】

【日本 1-4 ベネズエラ キリンチャレンジカップ2019】

 日本代表は19日、キリンチャレンジカップ2019でベネズエラ代表と対戦している。

 コパ・アメリカ2019(南米選手権)でベスト8進出を果たした相手に対し、森保ジャパンがどのようなパフォーマンスを見せるのかには大きな注目が集まったが、日本代表は8分にFWサロモン・ロンドンにヘディング弾を浴び、早々に失点を許すとその後は守備が完全に崩壊。ロンドンにハットトリックを記録され、MFジェフェルソン・ソテルドにもゴールを許すなど前半だけで0-4の大差をつけられた。

 後半は少しずつペースを取り戻し、MF山口蛍のゴールで1点を返した日本代表であったが、反撃はそこまで。途中出場の選手も大きく流れを変えることはできず、そのまま1-4の惨敗を喫することになった。

 チーム全体としてパフォーマンスが著しくなかったが、個人に目を向けても低調さが露呈してしまう形になった。この日、キャプテンマークを巻いたMF柴崎岳もその一人だ。

 これまで通り、ダブルボランチの一角として出場した同選手だったが、この日も守備に追われ、肝心な攻撃面で存在感を引き出せない。縦パスのズレなども生じ、前線の選手との呼吸もなかなか噛み合わない。相手の強靭なフィジカルを前にボールをロストするシーンも見受けられるなど、苦戦を強いられた。

 柴崎はこの日、66本のパスを繰り出している。成功率は82%とまずまずの成績であったが、アタッキングサードでのパス本数は8本と少ない。さらにスルーパスを2本出している同選手であるが、成功率は0%とやはり攻撃面での存在感は薄かったと言える。

 所属するデポルティーボ・ラ・コルーニャでも苦戦を強いられている柴崎のパフォーマンスは上がってきていない。ここ最近は守備に追われることが多く、前線に顔を出せないことがある。日本代表不動のプレーメーカーとの呼び声も高いが、いまやその役割を果たすことができる試合が数少なくなってきた印象だ。

 そもそも、日本代表が基本としている4-4-2や4-2-3-1のシステムでは柴崎のような選手が生きることは難しいとも言える。左サイドのMF中島翔哉、右サイドのMF堂安律といった選手の守備への貢献度はそれほど高いとは言えず(とくに中島)、柴崎がその影響で守備に重きを置かざるを得ないからだ。そうすると、当然ながら柴崎が前線へ飛び出していく回数は制限される。実際、ここ最近の森保ジャパンの攻撃は中島やMF南野拓実らの個人技に頼っている印象が強い。プレーメーカーとして、攻撃に絡む数が明らかに減っているのだ。

 昨年のロシアワールドカップで優勝を果たしたフランス代表はそのあたりをうまく考えている。システムは日本代表と同じ4-2-3-1で、ダブルボランチの基本はMFエンゴロ・カンテとMFポール・ポグバだ。そのうち、後者はどちらかと言えばゲームの組み立てから崩しまで幅広いタスクをこなすことができる選手で、攻撃に重心を置く。守備面で求められるものももちろんあるが、ポグバの特徴は攻撃面でこそ発揮される。

 ただ、ポグバが前に出ていくと当然ながら中盤にはスペースができる。カンテの守備範囲がとんでもなく広いとはいえ、さすがに一人で広大なエリアを守るのは骨が折れる作業だ。ではディディエ・デシャン監督はそこをどうカバーしたか。左サイドにMFブレーズ・マテュイディを配置したのである。

 本職は守備的MFであるマテュイディは左サイドハーフながら少し下がり目の位置でプレーする。これにより、中央をカンテ、マテュイディで締めることができるわけだ。カウンターを受けてもその2枚で防ぐことも多く、ポグバが戻ってきて3枚の並びになれば、相手に使われるスペースもそう簡単に生まれなかった。右サイドのFWキリアン・ムバッペを生かすための戦術でもあるが、ポグバのストロングポイントを生かすにも十分な戦術と言えた。

 上記したもの、もしくはアンカーを置くことでこのような形ができれば柴崎の特徴も発揮できるはずだが、今のところ森保監督がそれらのオプションを試す気配はない。となると、柴崎を起用する意味はなくなってくるといっても過言ではない。加えて本人のパフォーマンスも低下しているため、いよいよ立場は危うい。柴崎の起用はもう一度、考え直した方が良いかもしれない。

(文:編集部)

【了】

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