ガンバ大阪・宇佐美貴史に足りなかったのは…。世界のトップでやれる才能と致命的だった欠点【西部の目】

ドイツ・アウグスブルクから古巣ガンバ大阪に復帰した宇佐美貴史。直近3試合で4得点を挙げ、残留争いに巻き込まれていたチームを牽引している。27歳となった宇佐美が持つ才能と、MFとしては致命的な欠点を考えれば、FWでこそ活きると言えるだろう。(文:西部謙司)

2019年11月29日(Fri)10時40分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
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本人は関心がない才能

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2018/19シーズンはデュッセルドルフでプレーした【写真:Getty Images】

 才能――本人の関心は意外と低かったりする。先天的に足が速かったり、記憶力がよかったりしても、苦労して手にした能力でないので執着が薄い。周囲がうらやむ才能でも、本人は当たり前にできることにすぎないので有り難みがないのだ。

 宇佐美貴史の才能はキックにある。何でもできる選手だが、とくに素晴らしいのはキックの精度と強さだ。インサイドキックに近い蹴り方なのでコントロールが効いていて、それでいてボールのスピードもある。シュートにはうってつけだ。二度目の渡欧前、その才能について聞いてみたら、本人はまったく関心を持っていなかった。自然にできてしまうことだからだ。

 幼稚園児のころから1人でも飽きずにボールを蹴っていたというから、その中で自然に身についたものなのだろう。小学生のときには数え切れないぐらい得点を決めていた。育成に定評のあるガンバ大阪でも最高傑作といわれ、17歳でトップデビュー、19歳でバイエルン・ミュンヘンへ移籍。バイエルンからホッフェンハイムを経て、いったんG大阪へ戻ると2013年のJ2優勝、2014年J1優勝に貢献。2016年6月にアウクスブルクへ移籍、2度目のドイツでの挑戦だった。

 そのころの宇佐美は地味な得点をとれるようになっていた。ドリブルでかわして叩き込む派手なゴールだけでなく、押し込むだけのようなゴール。同じ左サイドハーフのポジションのクリスティアーノ・ロナウドが、よりゴール前に専念することで「そこ」にいられる頻度を上げていると話していた。ただ、宇佐美の理想はそれではなかった。

 運動量をセーブして得点するのではなく、守備でも貢献しながら得点も量産すること。ロナウドもできないことをやろうとしていた。

中盤で致命的な問題とは?

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ガンバ大阪の宇佐美貴史【写真:Getty Images】

 2019年6月、宇佐美は再びG大阪に戻ってきた。ドイツでの3年を経て、27歳になっていた。前回の帰還ではチームの救世主になった。今回も最近3試合で4得点。一時は降格の危機もあったG大阪は9位に浮上している。

 戻ってきた当初はインサイドハーフで起用されていた。攻撃に関しては何でもできるのでやれないことはない。ただ、あまり向いていないと思った。

 問題は守備だ。宇佐美は全く守備ができないわけではないし、二度目の渡欧のときの話を聞くかぎりとても意欲を持っていた。しかし、向き不向きというものはある。守備力そのものが低いというよりも、そもそも守備をできる場所にいないことが問題だと思う。

 例えば、中盤で味方がボールを失った瞬間、自分がボールより前方にいるとそのまま置き去りにされる。失った瞬間にスプリントして戻っていれば間に合ったかもしれないのに、それが遅れるので守備に入れない。途中で気づいて慌てて走っても間に合わない。常にそうではないが、守備でスイッチが入りにくい。MFでポジションに穴を開ければ、それが90分間に1回であっても致命傷になりかねず、そうなるとMFとしての信用を失う。ドイツでは信用を落とさないために走り続けた。

 だが、それには宇佐美より向いている選手がいる。宇佐美のようなシュートは打てなくても、別の才能を持つ人はいるわけだ。宇佐美のポジションはFWであり、さらにセカンドトップである。そこしかないと言っていい。1トップ向きではなく、パートナーがいて生きるタイプ。現在はアデミウソンとの2トップになっていて、適性ポジションに起用されて結果を出している。

 攻撃能力、とくにシュートに関しては世界のトップでやれる才能がある。だからバイエルンが獲ったのだと思う。ただ、実際にそこでやっていくには才能以外の仕事もリーグの平均ぐらいはやれないと長い時間プレーするのは難しい。才能はどこまで行けるかの「可能性」にすぎず、才能を生かせるかどうは才能以外のことにかかっている。宇佐美に足りなかったのは才能以外の部分だったと思われる。

 FWでも守備は要求されるが、MFに比べれば負担は軽い。ロナウドほど守備免除にはならなくても、宇佐美の才能を生かすには2トップの一角が適性だろう。

欧州へ行く選手、戻る選手

 宇佐美の帰還と入れ替わるように、中村敬斗、食野亮太郎、ファン・ウィジョがヨーロッパのクラブへ移籍していった。シーズン途中での引き抜きは、今後もJリーグで起こるに違いない。日本の若手選手の能力の高さはすでにスカウトには知られていて、獲得資金は格安だからだ。

 選手輸出国であるアルゼンチンはリーグの空洞化が深刻化したことがあった。働き盛りの有力選手たちはヨーロッパのクラブへ移籍してしまったからだ。ベテランと若手ばかりの編成になり中間層が抜けてしまっていた。ただ、ヨーロッパへ行く選手もいれば戻ってくる人もいる。戻ってくる選手はそれなりの年齢にはなっていたが、彼らの経験と技術はクラブやリーグ全体に恩恵をもたらした。今後はJリーグでもそうしたケースは増えていきそうだ。

 G大阪の場合、宇佐美と井手口陽介が復帰している。出て行く選手と戻ってくる選手の両方がいたことでバランスがとれた。ただ、なかなかそうもいなかない場合もあるだろう。クラブだけでなくJリーグも早急な対策に迫られている。

(文:西部謙司)

【了】

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