冨安健洋はやられたらやり返す。「引き分けで満足しない姿勢」、イタリア代表とのマッチアップにも屈せず

セリエA第14節、ナポリ対ボローニャが現地1日に行われ、ボローニャが1-2で逆転勝利を収めた。この試合にフル出場した日本代表DFの冨安健洋は、守備ではイタリア代表のインシーニェと対峙。一瞬の隙を突かれて先制点を献上したものの、その後は同点弾を演出するなど攻守にわたってチームの勝利に貢献した。(取材・文:神尾光臣【ナポリ】)

2019年12月02日(Mon)12時24分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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冨安健洋は右サイドバックで先発出場

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ボローニャの冨安健洋は右サイドバックでフル出場した【写真:Getty Images】

「私は病室から、40度の高熱が出ても(ネット回線中継で)練習を追っていた。選手たちにはそれに応えてもう少し頑張りを期待していたのだが。パルマ戦? 点を取られた後で選手たちから反撃が見られなかったことには腹が立った」

 29日、ボローニャのシニシャ・ミハイロビッチ監督は退院後初めて記者会見を行なったが、チームに話が及ぶとストレートに苦言を呈した。眼光は鋭く、『お涙ちょうだい』的なムードなどとうに消えていた。「誰もポジションに保証などない。私の言ったことはやってもらうし、そうでなければ外す」。選手たちには改めて、勝利のための厳格な姿勢を求めたのである。

 それを受けて、第14節の対戦相手はナポリ。CLリバプール戦を受けてチームとして疲労が残っているとはいえ、昨シーズン2位の強豪相手にアウェイ戦とは厳しい環境だが、ボローニャは攻めて勝つ姿勢を打ち出した。

 そして前節のパルマ戦でセンターバックとして出場した冨安健洋は、再び右サイドバックとして起用された。すると相手のエース格を抑え込むだけではなく、攻撃にも積極的に参与し、1−1となる同点ゴールにも絡んだ。ボローニャに移籍してからベストとも言うべき試合内容だった。

チームの要求に応えた冨安のパフォーマンス

 積極果敢に高い位置から仕掛けた。左サイドバックのラドスラフ・クレイチが守備で安定していなかったため、ミハイロビッチ監督をはじめとしたコーチ陣は、左利きのステファノ・デンスビルをサイドに回すことに決めた。その分、冨安にはいつもよりも攻撃に比重を置いたプレーが要求されたということだ。

 そして、その通りに答えた。高く上がってGKやセンターバックから大きなパスを出してもらい、正確なトラップでおさめたのちに精度の高いパスを出す。相手は前線からのプレスが厳しいナポリだが、冨安は両足を使って正確にパスを組み立てていた。こうして右サイドでMFリッカルド・オルソリーニやMFアンドレア・ポーリらと連係をつくるとともに、自らもチャンスとあれば積極的に攻め上がった。

 対面にいるのは高いテクニックを誇るイタリア代表FWロレンツォ・インシーニェだ。守備も精力的にこなすタレントに対しても物怖じはしない。7分、そのインシーニェを個人技でかわして縦をドリブルで突破し、そのまま後方に構えるイタリア代表DFジョバンニ・ディ・ロレンツォまで抜く始末。19分にはボールを奪うやミドルシュートを放ち、32分には攻め上がったのちに左足でクロスを上げ、MFブレリム・ジェマイリのシュートチャンスを演出した。

「やられたら反撃をする」冨安の姿勢

 守備に回れば、本職でないにもかかわらず安定感のあるプレーでインシーニェを先に行かせない。相手が中に絞れば内側へポジションを取り、足元にあるボールから目を離さずフェイントにもついて行き、サイドにパスをすれば即座にスイッチしてボールを止める。パスコースを読んだインターセプトにも成功していた。

 しかし経験の差か、一瞬の隙をつかれてインシーニェを逃してしまう。41分、裏のスペースにミドルパスが出される。冨安はそこに反応して後ろへ戻ろうとするが、そこにはDFマッティア・バーニがカバー。するとそこで冨安は足を止めてしまい、マークから外れたインシーニェは味方がヘディングで落としたボールを拾う。そのままドリブルで加速し、シュートを放つ。そのこぼれ球に狡猾に反応したFWフェルナンド・ジョレンテが押し込みし先制。前節に引き続き、シュートを決められてしまった。

 だが肝心なのはそのあと、まさに「やられたら反撃をする」という姿勢だ。冨安は、自分のプレーで挽回を図った。それが、後半13分の得点のシーン。得点に絡んだというよりも、自らが主体となって攻撃を組み立てたと言った方がしっくりとくるようなプレーだった。

 右サイドのオープンスペースへ駆け上がって、DFダニーロからのミドルパスを正確にトラップ。そこから、相手選手にプレッシャーを掛けられているにもかかわらず、前線のロドリゴ・パラシオに向けて正確な縦パスを入れる。しかし冨安は動くのをやめず、パラシオからリターンを受けるとジェマイリにパスを出す。そのボールは左サイドのFWニコラ・サンソーネに渡り、クロスが中央に放たれる。カリドゥ・クリバリが頭でクリアしたボールにはアンドレアス・スコフ・オルセンが反応し、ダイレクトでシュートを押し込んだ。

「引き分けで満足しないという姿勢」

 同点にしたのち、冨安は守備でも魅せた。果敢に攻めてくるインシーニェに対し、前半以上に集中してスペースを与えない。半身に構えて、インシーニェの右足にあるボールから目を離さず、体をしっかりとインシーニェの足とゴールを結んだ線の上に置く。フェイントで揺さぶっても目を離さず、中に絞ればプレスをかけ、パスを読んで遮断。とりわけ後半33分、ドリブル突破を仕掛けてきたインシーニェの前に立ちはだかり、一発でクリアした守備は圧巻だった。

 勢いに乗ったボローニャは36分にサンソーネが逆転弾を決める。試合をひっくり返されたナポリはアディショナルタイムにジョレンテがシュートを決めるが、VARによる判定の結果はオフサイド。オフサイドポジションに残しかけたのは冨安だったのだが、とりあえずきちんと相手をオフサイドに追いやることはできた。

 こうして冨安は終始アグレッシブにプレーをし、5試合ぶりとなる勝利に貢献した。

 試合後の記者会見でエミリオ・ディ・レオ戦術担当コーチは、「引き分けで満足しないという姿勢は、ミハイロビッチ監督の産物だ」と語った。指揮官は「『この姿勢を保っていると時に負けるかもしれないが、続けていれば最後に結果が出せる』と常に言っている」のだという。この姿勢をクラブとしてバックアップしていることが、いまのボローニャのアイデンティティとなっている。

 そこで冨安が定位置を取れているのは、その攻撃的な姿勢と質の高いプレーを評価されてということなのだろう。ファーストチェックをかわしてパスをさばき、自らも前線に攻め上がる。対面がインシーニェであっても物怖じはしない。その姿勢を貫いてサン・パオロから勝ち点3を持って帰ることに貢献できたのは、決して小さいことではない。

(取材・文:神尾光臣【ナポリ】)

【了】

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