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圧巻のマンC、デ・ブルイネ劇場。完全崩壊のアーセナルはついにサポーターも見放したか

プレミアリーグ第17節、アーセナル対マンチェスター・シティの一戦が現地15日に行われ、0-3でアウェイチームが勝利を収めた。試合は終始シティペースで進んでいき、中でもケビン・デ・ブルイネの活躍は素晴らしく、圧巻の一言。一方のアーセナルはサポーターも足早に去っていくほど結果と内容ともに散々なものになってしまった。(文:松井悠眞)

text by 松井悠眞 photo by Getty Images

圧勝のシティ、惨敗のアーセナル

メスト・エジル
MFメスト・エジル【写真:Getty Images】

 アーセナルは前節のウェストハム戦で公式戦10試合ぶりの勝利を収めた。約2ヶ月ぶりの勝利に選手たちは、試合終了後安堵の表情を浮かべた。そして今節はホームでマンチェスター・シティを迎えた。

 一方のシティは、前節のマンチェスター・ユナイテッド戦で敗北してしまうなど、いまいち調子が上がりきらず、3位まで転落。第16節終了時点で首位を快走するリバプールとの勝ち点差は「14」まで広がってしまい、優勝争いからまた後退をしてしまった。

 ビッグクラブに勝って何かを掴みたいアーセナルとこれ以上リバプールと離されたく無いシティの一戦だったが、試合開始早々に確信したのは「この試合はマンチェスター・シティの大量得点になる」ということだった。それだけシティは非常に早い時間帯にゴールを決め、その後も決定機を多く作り出した。

 一方のアーセナルはホームでありながら何もすることが出来なかった。守備はシティの攻撃陣を抑えることが出来ず、攻撃ではどこから攻めていいのかわらないといった感じであった。

デ・ブルイネ劇場

ケビン・デ・ブルイネ
MFケビン・デ・ブルイネ【写真:Getty Images】

 前述した通り、先制点は開始早々に生まれる。FWガブリエウ・ジェズスが左サイドからマイナスにグラウンダーのクロスを上げると、MFケビン・デ・ブルイネが合わせてゴールネットを揺らした。開始わずか1分での出来事である。決して簡単なクロスではなかった。クロススピードがあり、ボールはバウンドをしていたため、枠を大きく外してしまう可能性があった。しかし世界最高峰のMFはいとも簡単に合わせて先制点を奪った。

 そして14分、今度はデ・ブルイネが左サイドからグラウンダーのクロスを上げると、中でフリーになっていたFWラヒーム・スターリングが合わせて追加点を奪う。早い時間帯に先制点を奪ったシティだが、その後はボールを保持して試合を作ることが難しくなってしまう。それでもアーセナルに決定機を作らせることなかった。

 一方のアーセナルはボールを保持することは出来るものの、前線にパスを供給することが出来ず、後方で回す時間が多くなり、決定機どころかシュートシーンすら作ることが出来ない。

 そのような状況のなかで39分にデ・ブルイネが再びゴールネットを揺らす。バイタルエリア中央から左足を振り抜き、ゴール左隅に決めた。2G1Aの圧巻のパフォーマンスを見せたデ・ブルイネはこの試合チーム最多となる5本のシュートと3本のキーパスを通している。まさにデ・ブルイネ劇場。圧巻の一言だ。

防戦一方の後半

 前半だけで3失点のアーセナルは1点を奪いに行くというスタイルを見せなければならなかったが、その姿を見せることが出来なかった。シティは4点目こそ奪うことが出来なかったが、試合の主導権を完全に握る。

 後半に入ってもデ・ブルイネが調子を落とすことはなく、チャンスメイクをしていく。同選手だけでなく、スターリングやジェズスが前半と比べるとより流動的にポジションを変えてマークを剥がし、ポゼッションを高めていく。

 それに対してアーセナルは為す術がなく、最後の場面で何とか持ち堪えたという印象だ。攻めてもカウンターを貰いピンチを作ってしまい、引いても守っても決定機を作らせてしまうなど、どうすることも出来ずに試合終了となった。得点以上にチーム力の差があらわになった。

 この日アーセナル選手で奮闘をしたのはGKベルント・レノだ。前半ビッグセーブを見せるなど、懸命にゴールマウスを守り続けた。3失点こそしてしまっているが、3点ともGKはどうすることも出来ないというゴールだ。

 データサイト『Who Scored』によるとアーセナルのポゼッションは42.4%:57.6%、シュート数は6本:14本、そのうち枠内シュートが1本:7本、パス数480本:669本、パス成功率87%:91%と数値を見てもどの項目でも劣っているのがわかる。

全てが崩壊のアーセナル

 この試合に限らずアーセナルは全てが噛み合っていない。特に悲惨な状況なのがディフェンス陣だ。引いても守ることが出来ない状況であるにも関わらず、DFラインはずるずると下がり簡単に崩される。前線からプレスに行っても、それに連動するようにラインを前に押し切ることが出来ない。そのため中盤にはスペースが生まれてしまい、パスワークが非常に上手いシティは心地よくプレーをすることが出来た。

 さらにアーセナルの守備は枚数が足りていても機能しない。2失点目のシーンは、アーセナルの選手はボックス内に5人いたにも関わらず、何もすることが出来ずにゴールを許している。シティの選手はボールを持ったデ・ブルイネとゴールを決めたスターリングのたった2人だけだった…

 また中盤の選手がデュエルの場面で簡単に負けてしまうのだ。この試合で言えば、3失点目のシーンがそれに当てはまるだろう。デ・ブルイネに対してMFマテオ・ゲンドゥジがプレスに行くも、簡単に振り切られてしまい失点をしている。

 それだけでなく、攻撃時にも問題はある。後方からのビルドアップは相変わらず不安定で、奪われてしまうシーンが散見されてしまう。この日も後半にそのような場面が見られてしまった。繋ぐことが出来ないのであれば、前線にロングボールを供給するのも戦術の一つとして採用をしても良いのではないだろうか。FWにスピードのあるオーバメヤンがいれば、チャンスを作りだすことも可能なはずだ。

 そしてDFラインだけでなく中盤の底2枚にも課題はある。サイドの選手がボールをキープしている時に横に顔を出すことが出来ず、一歩下がった位置でボールを受けることが多い。そのため相手陣内深くまでボール運べても、また低い位置からやり直さなければならないシーンが多くなる。それでは攻撃に厚みが出ず迫力がない。

 このような無様な試合内容に対してMFメスト・エジルは、ベンチに下がる時手袋を蹴り苛立ちを見せた。そして同選手は試合中にも事あるごとに上手くいっていないという表情を浮かべていた。また追う展開にも関わらずFWアレクサンドル・ラカゼットの起用がなく、同選手の表情は曇っていた。指揮官の選手起用も疑問だ。

 そしてチームの現状に対してサポーターの心も離れている。試合開始直後はテレビカメラに映る席は満席だったが、後半が始まるとちらほら空席が目立つようになり、アディショナルタイムの頃には空席の方が多かった。

 チーム内の雰囲気だけでなくファンが見放し始めた状況のアーセナルは、様々な面で崩壊していると言っていいかもしれない。

(文:松井悠眞)

【了】

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