「浦和レッズに負けたくない」。FC東京初戴冠へ、石川直宏を奮い立たせた永井雄一郎の言葉【石川直宏 素直(2)】

今シーズンは悲願達成まであと一歩のところに迫ったFC東京。好評発売中の『素顔 石川直宏』から、石川直宏が初戴冠の瞬間を振り返った章を一部抜粋して全5回で公開する。今回は第2回。(文:馬場康平)

2020年01月03日(Fri)10時05分配信

text by 馬場康平 photo Getty Images
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「ちょっと表情が堅いんじゃないの?」

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FC東京でプレーした石川直宏(写真は2003年7月12日のもの)【写真:Getty Images】

「あの日は、本当にいい天気だった」

 11月3日、前泊したホテルからバスで試合会場へと向かう。その車中で「すげぇな」と誰かが叫んだ。スタジアムへ向かう途中、多くの青と赤が目に飛び込んできた。それを合図に堰を切ったように、次々と感嘆の声が沸き起こり、車内は一気に盛り上がった。

 実際に、スタジアムの中に入ると、それ以上に驚いた。集まった観客は5万3236人。真っ青な空の下、そこには浦和の赤で埋め尽くされた観客席が広がる。

「レッズサポーターが多いこと、多いこと」。圧倒されたが、逆の感情が芽生えた。

「やばいな、これ。この中で勝ったら気持ちいいんだろうな」

 それまでタイトルとは縁遠かった。クラブとしても、個人としても初の日本一を懸けた一戦だった。入場を控えたバックヤードで永井雄一郎がナオを見つけると、声を掛けてきた。

「ちょっと表情が堅いんじゃないの?」

「そんなことないですよ」

 そう口にはしたが、内心ではドンドンと心臓が脈打っていた。

「逆に、永井さんにそう言われたことで、『レッズはこういう場に慣れてるから余裕だ』と思われているのがすごくいやだった。余計に負けたくないとスイッチが入った」

(文:馬場康平)
 
▼石川直宏(いしかわ・なおひろ)
1981年生まれ、神奈川県横須賀市出身。育成組織から横浜F・マリノスに在籍し、2000年にトップチーム昇格、02年4月にFC東京に加入。03年Jリーグ優秀選手賞、フェアプレイ個人賞受賞、09年にはJリーグベストイレブンを受賞。U-23 日本代表としてアテネオリンピックに出場し、日本代表でも6試合に出場。17年に現役を引退し、翌18年よりFC 東京クラブコミュニケーターを務めている。
 

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(著・馬場康平)

定価:本体1600円+税
クラブからも、サポーターからも愛された石川直宏のバイオグラフィー。
FC東京のサイドを駆け抜け、得点やアシストを量産した石川直宏のサッカー人生は、常に逆境との戦いだった。
右膝前十字靭帯損傷、腰椎椎間板ヘルニアなど、度重なる大怪我に見舞われ、夢だったワールドカップ出場も叶わなかった。
それでも何度も立ち上がり続けたアタッカーの素顔に迫る。

詳細はこちらから

【了】

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