冨安健洋に目覚める新たな能力とは? セリエA初ゴールはお預けも…強敵にも示した存在感

セリエA第26節、ラツィオ対ボローニャが現地時間29日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。日本代表DFの冨安健洋はこの日も先発フル出場。チームは好調を維持する相手に完敗を喫したが、冨安自身は積極的に攻撃参加し、“幻のゴール”も挙げるなど奮闘していた。(文:神尾光臣【イタリア】)

2020年03月01日(Sun)13時10分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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セリエA初ゴールと思いきや…

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 ラツィオ戦の67分、アンドレア・ポーリが前線へ山なりのボールを上げる。エリア前では、ロドリゴ・パラシオが構えており、ヘディングで右のスペースへ落とした。慌ててカバーに入ったシュテファン・ラドゥはクリアをしようとするが、慌てて落下点に入ったために体が伸び切ってしまい、ボールはすぐ近くに落ちた。

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 嗅覚の鋭いストライカーなら間違いなく喰らいつくボール。そしてこれに、反応した選手がいた。何と冨安健洋だ。

 パラシオの落としに反応して、エリア内からダッシュで侵入していた彼は、ラドゥの中途半端なクリアボールの落下点に走ってきた。そして、ノートラップで右足を合わせる。上半身をしっかりと前傾させて体を押さえながら蹴り込んだボレーシュートは、ピッチの上で力強くバウンド。この日再三のビッグセーブをしていたトーマス・ストラコシャは掴むこともできず、ゴール左下隅へと吸い込まれた。

 本当にストライカーかと見紛うような素晴らしいシュートで、ついにセリエA初ゴール…かと思いきや、ロザーリオ・アビッソ主審の元にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のルームから通知が入る。ピッチサイドでビデオを見直した結果はオフサイド。その前のアクションで、パラシオがポーリのパスを出した時点で最後尾の相手DFからわずかに体を前に出していたのだ。

 ということで、幻となってしまった冨安のセリエA初ゴール。記録に残らないプレーにはなったが、見るものにはインパクトを残した。ガゼッタ・デッロ・スポルトは1日付でボローニャの中で最高点を付けるようだ。チームとして負け試合になったので、過剰に持ち上げた評価をするのは良いことではないだろう。しかし、これまで以上に攻撃的に振る舞った彼のパフォーマンスは、またも素晴らしいものだった。

ボローニャを苦しませたラツィオの守備戦術

 前節のウディネーゼ戦では、試合終了間際にアシスト。その際は故障者続出で戦力が非常に少なくなっていたこともあって、最後はセンターバックでもサイドバックでもなく、もはや右のMFとして上下動を繰り返していた。そしてその動きは、ラツィオ戦に向けた戦術上のヒントとなった。

 並び上は右サイドバック。相手が高い位置でボールをキープして攻めてきた場合には、きちんと最終ラインに引いてサイドのスペースを閉める。一方で低い位置でビルドアップを図ろうとした際には、思いっきりポジションを上げてラツィオの左ウィングバックを務めるジョニーにプレスを掛けるのだ。

 ラツィオは3バックのシステムを取りつつ、プレスラインを低めに設定することも厭わずにボールを奪い、前線とサイドにいるスピードの速い選手に展開して攻め切るというスタイルを取る。そのような逆襲を無効化させる手段の一つとして、冨安に相手の左サイドの蓋をさせるという算段だった。

 しかし、ボローニャがチームとして立てたプランは、いきなり瓦解してしまう。ラツィオのルイス・アルベルトとホアキン・コレアが絶好調で、ボローニャの高い位置からのプレスを個人技で無力化しては素早いカウンターを演出してくる。18分のルイス・アルベルトのミドル、また21分のコレアのシュートによって、2点のビハインドを作られてしまった。

 そうして序盤にいきなりビハインドを負ったチームの中で、冨安も苦しんだ。ボローニャが後方からビルドアップを仕掛けてくることをラツィオのシモーネ・インザーギ監督もしっかりと読み切っており、冨安らDF陣が攻撃を組み立てようとしてきた際にはしっかりと戦術的な守備を敷いた。

 あえてボールは持たせる。しかし、パスの出しどころは潰す。前線の選手も引いてスペースを潰し、前にも横にもパスを出させない。冨安が縦にボールを出せば、アンカーのルーカス・レイバがこれを読んでカット、出しどころに迷って横パスを出せばカットしてカウンターを狙うなど、機能不全に陥れようとした。

 もっとも、冨安自身のプレーは破綻を来さなかった。守備ではきちんとサイドを警戒して、ジョニーが仕掛けてくれば1対1でボールを奪う。チャンスには味方にボールを預けながら前へと飛び出して、攻撃に絡む。28分にはポーリのパスに反応してエリア内に飛び出し、柔らかいボールを中央に折り返す。もっともこれに味方が反応し切れておらず、ラツィオの守備陣にカットされた。

次節はユベントス戦。実力を示せるか

 こうして反撃のムードを作っていったボローニャは、ラツィオのペースダウンも相まってより攻撃的に試合を進めていく。それでもストラコシャのファインセーブもあってなかなか点が奪えない中、後半開始から15分が経過したところで勝負に出た。ヘディングの強いフェデリコ・サンタンデールと、故障から復帰した左ウィングのニコラ・サンソーネの投入である。その時に下げたのは、守備的MFのイェルディ・スハウテンと右ウィングのリッカルド・オルソリーニだ。

 そしてオルソリーニがいなくなった分は、何と冨安に頑張ってもらうという算段。攻撃上は完全に3-4-1-2で、冨安はまたも右のMFを任されたというわけだ。しかしチャンスとあれば積極的に前へと行き、冒頭で紹介したようなシュートシーンも見せた。

 さすがにもともと攻撃的なポジションの選手ではなく、シニシャ・ミハイロビッチ監督は右サイドにアンドレアス・スコフ・オルセンを投入し冨安を3バックの右に下げている。しかし、そのポジションになっても冨安の攻撃的な姿勢は変わらず、3バックの右になっても積極的に攻撃に関わっていた。

 ここしばらくは毎回のように書いていることかもしれないが、冨安はすっかり攻撃能力の高いディフェンダーとしての存在感を確立してしまっている。いや、もはやMF的でもある。前節にはアシスト、そして今回の“幻”のゴールだ。オルソリーニのドリブルによる切り崩しだけでなく、冨安の正確なパス出しとパワフルな上下動も、右サイドの攻撃を演出する重要な要素となっている。

 次節はユベントス戦である。前半戦での対戦に冨安は、日本代表招集時に肉離れを負った影響で出られなかった。しかし今度は実力を試せる。

 この日、リーグ首位に立った絶好調のラツィオを前にも確かな存在感を示した彼が、クリスティアーノ・ロナウドらを擁する攻撃陣とどう対峙するのか楽しみだ。ただ今の様子では何となく「冨安の攻撃参加がユーベの左サイドに通用するのか」という図式になるような気もするのだが…。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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