バルセロナ、ビルドアップが完全破壊された理由。禁断の4-4-2が歪めた本来のスタイル【バルサの20年史(終)】

世界のフットボールシーンは、この約20年で大きく変わったと言える。選手の契約と移籍のあり方が変わり、名門クラブも栄枯盛衰を経験している。今回は120年を超える歴史を持つバルセロナの現代史を複数回に渡って辿っていきたい。(文:西部謙司)

2020年04月21日(Tue)10時00分配信

シリーズ:バルサの20年史
text by 西部謙司 photo Getty Images
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4-4-2という禁じ手

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【写真:Getty Images】

 2017/18シーズン、エルネスト・バルベルデ監督が就任した。元バルサの選手であり、前シーズンまではアスレティック・ビルバオを率いていた。夏のマーケットでネイマールがパリ・サンジェルマンへ移籍、代役としてボルシア・ドルトムントからウスマン・デンベレを獲得したが第9節で負傷離脱。

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 バルベルデ監督はここで4-4-2を採用した。バルサでは馴染みの薄いシステムだが、合理的な選択である。

 リオネル・メッシといかに共存していくか。これは歴代監督の課題となっていた。ジョゼップ・グアルディオラは偽9番として起用し、ルイス・エンリケはMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)の右ウイングとした。こちらはいわば偽7番だ。いずれにしても周囲にある程度の負荷がかかり、システムとしても歪みが生じる。そこで、定期的にシステムを修正する必要があった。

 メッシ自身のプレーはほとんど変わらない。スタートポジションがCFでも右ウイングでも、右のハーフスペースが主戦場になる。そして、最後に守備をする選手だ。

 そうすると、4-4-2は実は最も無理のないシステムといえる。最初からメッシを右のハーフスペースに置けるし、守備では前残りできる。周囲の役割もシンプルになる。ただし、バルサは伝統的に4-3-3か3-4-3を使っていて、4-4-2ではカンテラとの整合性はなくなってしまう。

チームを歪めた4-4-2

 本来、システムの違いは大した問題ではない。バルサの場合、伝統的に守備では相手のシステムに噛み合わせる方針なので、ここに関してはもともと主体的ではないのだ。グアルディラ監督のときには3-5-2も使っていた。重要なのはプレーのディテール。どういうときにどうプレーするか、一貫性を持って積み上げてきたのはそれである。

 しかし、システムが無関係というわけではない。ナポレオン・ボナパルトは「人は制服どおりの人間になる」と言ったというが、多少のシステムの影響は避けられない。

 17/18はパウリーニョを獲得し、18/19はアルトゥーロ・ビダルを獲っている。4-4-2のボランチに相応しい人選だが、従来のバルサにはいないタイプのMFだ。システムがある程度人を選ぶところがあるし、システムの構造上の問題に選手が適応しなければいけないところも出てくる。4-4-2は、いくぶんバルサのチームとしてのあり方を歪めてしまったかもしれない。

 ただ、メッシを生かすことは正義であり、そのメリットはデメリットを上回ることもはっきりしていた。バルベルデ監督のバルサはリーガ・エスパニョーラを2シーズン連続で制覇している。

バルサの再構築

 バルベルデのバルサにとって問題はCLだった。17/18はラウンド16でASローマに敗れ、18/19は準決勝でリバプールに負けている。

 ローマ戦はカンプ・ノウで4-1と勝利した時点で、準々決勝進出は決まったようなものだった。ところが、アウェイを0-3で落としてしまう。合計4-4、ホームで喫したエディン・ジェコの1ゴールがこれほどの意味を持つとは、そのときには誰も想像していなかっただろう。

 0-3で完敗した第2戦は、ローマのハイプレス戦法に対して打開策を見出せないまま押し切られている。相手のプレスをバルサが外しきれない、ボールを敵陣に運べない。これはバルサのスタイルが完全に破壊されたといっていい事態だった。

 すでにバイエルン・ミュンヘンに0-7(2試合合計)で敗れたとき、バルサのプレスを外せる相手がCLでは存在することが明らかになっていたが、バルサのビルドアップを破壊できる相手はまだいなかった。しかし、その最後の砦もローマ戦で失ったわけだ。

 18/19もほぼ同じ結果といっていい。リバプールにホームで3-0、アウェイで0-4。中途半端なバルサでは国内なら誤魔化せてもCLでは勝ち抜けない。バルベルデ監督の3年目は、バルサ本来のスタイルに立ち戻さなければならなかった。

 19/20シーズン、アントワーヌ・グリーズマンとフレンキー・デヨングの獲得で4-3-3への回帰を図る。しかし、ルイス・スアレスの負傷欠場によって4-4-2へ戻ってしまう。年明け早々にはバルベルデ監督が解任され、キケ・セティエン新監督に。伝統回帰のための人選だろう。

 新型コロナウイルスの蔓延で中断している間も、シャビを新監督に迎えるのではないかという噂、ネイマールの復帰の可能性について、幹部6人の辞任など、バルサの話題は絶えない。ただ、紆余曲折はあっても、戻るべき姿ははっきりしているのがバルセロナというクラブの強みだ。

(文:西部謙司)

【了】

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