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リバプール、南野拓実がハーフタイムで下げられた理由は? 再開初戦で王者を苦しめたクロップキラーの策略

プレミアリーグ第30節、エバートン対リバプールが現地時間21日に行われ、試合は0-0のドローに終わった。南野拓実はリーグ再開初戦の先発メンバーに名を連ねたが、ハーフタイムに退いている。再開初戦でリバプールが勝ち点3を掴むことができなかった理由と、南野のパフォーマンスはどうだったのか振り返ってみたい。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

試合勘に苦しんだリバプール

南野拓実

【写真:Getty Images】

 およそ3か月ぶりに再開された公式戦の初戦は、伝統あるマージーサイドダービーとなった。30年ぶりのリーグ優勝に向けて、リバプールの時計の針は再び動き出したが、初戦からフルスロットルというわけにはいかなかった。

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 おなじみの4-3-3の布陣で臨んだリバプールはボールを握りながらゴールを狙ったが、ところどころで試合勘のなさが垣間見える内容だった。最後までゴールネットを揺らすことができず、スコアレスのまま試合は終わっている。

 たとえば、ジョーダン・ヘンダーソンやトレント・アレクサンダー=アーノルドのクロスは精度を欠いた。ファビーニョの寄せもコンマ数秒遅れ、いつもなら捕れるところがファールになってしまう。運動量が落ちていたようには見えなかったが、プレッシャーを受けたときのプレーの精度は、試合を重ねるうちに向上していくだろう。

 UEFAチャンピオンズリーグではラウンド16でアトレティコ・マドリードに苦杯を舐めさせられ、2つの国内カップ戦でもすでに姿を消している。残されたリーグ戦は試合前の時点で2位のマンチェスター・シティに22ポイント差をつけて独走。残された9試合で、リバプールが何にプライオリティを置いて戦うべきかは明白だった。

 指揮官は再開前のテストマッチで好調だったナビ・ケイタや南野拓実を先発で起用している。一方、怪我からチーム練習に復帰したばかりのモハメド・サラーとアンドリュー・ロバートソンはこの試合でプレーさせなかった。指揮官が最も恐れているのは選手が負傷して来季の開幕に間に合わないことで、今後も選手のコンディションを見極めながらリスクを回避した起用が続くだろう。

南野が前半で下げられた理由は…

 南野拓実はサラーが普段務めている右ウイングのポジションで先発したが、ハーフタイムにアレックス・オックスレイド=チェンバレンと交代している。しかし、中断前に比べても周りとの連携は格段に向上しているように見えた。

 中断期間を使って、チームメイトも南野がどういう選手なのかを理解することができたのかもしれない。副キャプテンを務めるジェームズ・ミルナーも「彼にとってこの期間は間違いなく大きな助けとなった。うまくいけばタキ(南野)は大きなインパクトを残せると思う」と評している。

 南野は周囲との連携の中で生きるタイプの選手で、個の力で打開できるサディオ・マネやサラーとは違って、適応には少し時間がかかるだろうと予想されていた。その側面でこの試合を見ると、放ったチーム最多の2本のシュートはいずれも流れの中で生まれている。これまでと比べればジョーダン・ヘンダーソンやトレント・アレクサンダー=アーノルドとのポジショニングもぎこちなさは消えていた。

「(2日後の)水曜日に再びプレーすることを忘れてはならない」と試合後に指揮官が語った通り、2日後にはクリスタルパレス戦、来週のミッドウィークからは10日間で4試合という過密日程が予定されている。「試合前から5人の交代枠を使うことを考えていた。ハーフタイムでの交代はパフォーマンスとは関係ない。純粋に(5人の交代枠を)使ってみたかっただけだ」と説明している。

 クロップは選手を守る意味で、悪かったときも必ず称賛する。デビュー戦となったマージーサイドダービーではいいプレーを見せられなかったが、「彼は突出していた」と南野を絶賛している。一方でこの日の「タキは良かった。最初は少し難しかったが、ゲームに入れていた」というコメントは、そういったものではなく、正直な評価だっただろう。

クロップキラーの策略

 南野の交代は当初から予想されていたものだとしても、確かにリバプールはチャンスメイクに苦しんでいた。70%近いボール保持率を記録しながらシュート本数は10本、3本の枠内シュートは相手と同じ数だった。

 昨年12月からエバートンを率いるカルロ・アンチェロッティはリバプールを得意としている。ナポリ時代は2シーズン続けてグループステージで同組となり、昨季は1勝1敗、今季は1勝1分けと勝ち越した。1月5日のマージーサイドダービーではアンチェロッティが就任直後で本領発揮とはいかなかったが、ナポリ時代の戦績はクロップキラーと呼ぶにふさわしい。

 ナポリ時代にリバプールを苦しめたコンパクトな4-4-2の守備組織と縦に早いショートカウンターはエバートンにも引き継がれた。4-4の外ではリバプールが自由にボールを回すことができたが、ブロックの中にボールを入れるや否や、リバプールは鋭いプレッシャーにさらされた。エバートンはボールを奪うと2トップのリシャルリソンとドミニク・キャルバート=ルーウィンを中心に少ない人数で攻撃を完結させた。再開初戦という難しいゲームで、首位を相手に勝ち点1を取れたことは大いに評価できるだろう。

 リバプールにとっては勝ち点3をとれなかったことよりも、2人の負傷者を出したことの方が痛いだろう。ロバートソンに代わって左サイドバックで起用されたジェームズ・ミルナーは左足を痛め、前半終了を待たずに交代。71分にはジョエル・マティプが右足のつま先を痛めてピッチを後にした。ミルナーは前回対戦でも同じ太ももを痛めて負傷交代している。

 積極的なターンオーバーが敷かれることはこの試合で明らかになった。南野には今後もチャンスが与えられる一方、ティモ・ヴェルナーをチェルシーに獲られてしまったことで、南野にかかる期待はより大きなものになるだろう。優勝を間近に控えるリバプールにとって、今季の残りの8試合の大半は消化試合になるかもしれないが、南野にとっては生き残りをかけた真剣勝負が続いていく。

(文:加藤健一)

【了】

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