冨安健洋vsC・ロナウド、白熱のバトル。ボローニャでの飛躍的進化を証明した90分間

現地22日にセリエA第27節が行われ、ボローニャはユベントスに0-2で敗れた。この試合では、ボローニャの右サイドバックに入った冨安健洋と、ユベントスの左ウィングを担ったクリスティアーノ・ロナウドによるマッチアップが実現。日本代表の将来を担う21歳は、百戦錬磨の世界的名手と相対してどのようなパフォーマンスを披露したのだろうか。(文:舩木渉)

2020年06月23日(Tue)12時26分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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冨安vsC・ロナウドが実現した90分間

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 かけがえのない経験になったに違いない。冨安健洋vsクリスティアーノ・ロナウドの90分間は、濃厚だった。

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 現地22日にセリエA第27節が行われ、ボローニャはホームにユベントスを迎えた。結果は2-0でユベントスの勝利だったが、我々日本人にとってはスコア以上に注目してしまうマッチアップが実現した。

 4-3-3のユベントスは、左ウィングにクリスティアーノ・ロナウドを配置。一方のボローニャは4-2-3-1の右サイドバックに冨安健洋を起用し、サッカー界のアイコンと日本の将来を担う大器が対面で火花を散らした。

 ここ数年プレーエリアが中央に寄っていき、ストライカーとしてのイメージが強くなっていたロナウドが若き日のようなウィンガーに戻った。ユベントスを率いるマウリツィオ・サッリ監督がボローニャ戦の前日記者会見で明かしたところによれば、サイドでのプレーは本人の希望が反映されているという。

 序盤から2人は何度もぶつかり合った。まず7分、ロナウドは冨安が味方のカバーリングと被った瞬間にタイミングを外してカットインし、右足でシュートを放つ。ひやりとしたが、21歳の日本代表DFは直後に挽回した。8分、ペナルティエリア内でフリーになってパスを受けたロナウドに対し、中央に絞っていた冨安は急激に向きを変えて抜群のタイミングで体を寄せてノーファウルでボールを奪い取る。

 35歳のスーパースターは基本的に左サイドの高い位置に張りつき、守備に戻らない。さらにボローニャの左サイドバックは攻撃的なミッチェル・ダイクスが長期離脱から復帰したため、冨安がオーバーラップして攻撃参加する機会は限られた。相手ボール時は4バックの右サイド、自軍ボール保持時は3バックの右ストッパーという役回りで、闇雲にリスクを冒すより1対1で破られない方が大事、という考え方だっただろう。

 20分、ロナウドが仕掛けた。だが、冨安は飛び込むことなく冷静に対処する。結果的にクロスを上げられるものの、時間をかけさせたことで味方にゴール前で準備を整える余裕を与えることができた。守備者としては正しい判断を下せていたと言える。

猛獣を抑え込むが…

 直後のコーナーキックの場面で、ステファノ・デンスビルがマタイス・デ・リフトのユニフォームを引っ張って倒してしまい、VARの介入の末、ユベントスにPKを与えてしまったのは痛恨だった。これをロナウドに決められてボローニャは先制されてしまう。

 ビハインドを背負っても、冨安は焦らなかった。攻撃はリカルド・オルソリーニやニコラ・サンソーネ、ムサ・バローといった前線のアタッカー陣が中心となるカウンターに任せ、とにかく目の前のロナウドを封じることに集中する。相手の左サイドバック、マッティア・デ・シリオのタイミングを見計らった攻撃参加にも苦しめられたが、オルソリーニの戻りが遅れて局所的に数的不利な状況を作られても辛抱強く耐えた。

 30分には斜めのパスを受けたロナウドの足もとに背中側から鋭く寄せ、ファウルなくクリーンにボールを奪い取って見せる。40分の1対1の場面ではフェイントに引っかかってクロスを上げられてしまい、パウロ・ディバラにシュートを放たれた。これは精度を欠いたフィニッシュに助けられた。

 ディバラやフェデリコ・ベルナルデスキらに揺さぶられて不安定だったボローニャのディフェンスラインにおいて、冨安だけは大きく破綻することなく粘り強い対応でロナウドの猛獣のようなエネルギーを抑え込んでいた。

 ただ、36分にディバラのスーパーゴールで2失点目を喫し、後半になると中盤の守備フィルターが利かなくなって、一方的にユベントスが攻め続ける時間帯も長くなった。前方に危険なスペースができると、それも埋めなくてはならず、冨安にとって難しい対応を強いられる局面も増える。

 52分にはペナルティエリア内、ゴール前のロナウドに縦パスが入ってピンチを迎えた。その時、冨安は目の前にいる背番号7のコントロールがやや大きくなったのを見逃さず、ゴールと相手の間に入ってスッと足を出し、大きくクリアした。

 直後にディフェンスラインが横に広げられてカバーリングの準備ができていないまま前に出てボールを奪おうとした際に、ロナウドに背後を取られたのにはヒヤリとさせられた。センターバックのデンスビルのサポートも遅く、非常に危険な状態だったが、シュートが外れてことなきを得た。

 53分には、ベルナルデスキが放った強烈なシュートのこぼれ球をロナウドが拾い、対面の冨安をドリブルで揺さぶってシュートに持ち込む。直前に冨安はシュートがゴールの枠やGKに弾かれた際にオフサイドを取れるよう意識してポジションを上げ、ロナウドのマークを一時的に外していた。

 結果的にGKウカシュ・スコルプスキの好セーブに救われる形になったが、後半はこうした1対1や瞬間的な判断でもやや後手に回るシーンが増えた印象だった。

秀逸だった被カウンター時の対応

 それでも集中力を切らさず、冨安に感銘を受けたのは、被カウンター時の対応力だ。例えば61分、敵陣でのボローニャのコーナーキックの流れからロナウドがボールを運んでカウンターに移ろうとする。冨安は懸命に食らいつき、ファウル覚悟でスピードアップを阻止した。

 後半アディショナルタイムも終了間際になり、体力的にも厳しくなっていたことが想像される95分、冨安は味方のフリーキックのこぼれ球に反応し、ペナルティエリア外からシュートを放つ。これが相手にブロックされ、ユベントスの選手が一気に前線へ駆け出した。

 この時、ハーフウェーラインを超えた段階でボローニャは2対4と数的不利な状態を作られていたが、最終的にゴールにはつながらなかった。冨安は全力のスプリントで、最も危険なゴール前中央を埋めるべく一直線に駆け戻り、ユベントスの選手たちの判断を多少なりとも遅らせることに貢献していた。

 もしボールや人に寄せて、中央のスペースを空けていたら簡単にゴールを割られていただろう。世界最高峰の選手たちが一気に押し寄せる直線的なカウンターの場面で、しかも終盤の体力がギリギリの状態で、まず最も危険なスペースを埋めるために全力で戻るという判断を下せたことは特筆に値する。

 90分間を総合してみると、冨安の「対ロナウド」が完勝だったとは言えない。チームとしても2点を失って敗れた。サッリ監督によればロナウドは「体調が万全ではない」そうで、100%の状態であればもっとコテンパンにやられていたかもしれないが、ワールドクラスの選手を単独で抑え込めるポテンシャルがあることは十分に証明した。

 少なくとも今回のユベントス戦において、ボローニャのディフェンスラインで冨安がベストプレーヤーだったことに疑いはない。

 冨安は今季はここまでセリエAで21試合に出場し、主に右サイドバックとして研さんを積んでいる。欧州トップリーグ、しかも守備にうるさいと定評のあるイタリアで1年間を通してレギュラーを張れている。市場価値が飛躍的に高まり、ビッグクラブからも注目を集める存在になるのも自然な流れだ。

 日常的にロナウドのような実力も経験もピカイチのアタッカーとマッチアップできる環境は、この上ない財産になる。冨安ならきっと、世界と対等に戦える、いや世界を圧倒するようなディフェンダーになれる。そんなさらなる進化への期待がどんどん膨らむ90分間だった。

(文:舩木渉)

【了】

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