クロップ×香川真司のドルトムントの爆発力。若く、速く、激しい…その魅力の根源とは?【ドイツフスバルのDNA 前編】

歴史のあるヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた『フットボールクラブ哲学図鑑』(西部謙司著)から、ドイツらしいフットボールに迫ったボルシア・ドルトムント×ボルシアMGの章を7月13日の発売に先駆けて一部を抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:西部謙司)

2020年07月07日(Tue)10時00分配信

text by 西部謙司 photo Getty Images
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圧倒的な集客力を誇るドルトムントの本拠地

ユルゲン・クロップ
【写真:Getty Images】

 ボルシア・メンヘングラッドバッハ(以下MG)が席巻していた1970年代もう一つのボルシアであるボルシア・ドルトムント(以下BVB)は低迷していた。ただ、ヴェストファーレンにはいつも多くの観客が詰めかけていたという。現在は改装されてネーミングライツを売ったことからジグナル・イドゥナ・パルクとなったホームスタジアムのゴール裏は2万2000人の収容力を誇る。

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 全体で8万1365人収容、特筆すべきはそのうちテラス(立ち見席)が2万5020席もあることだ。イングランドはすでにテラスが禁じられていて、「テラスは危険だ」と、しばしば指摘するのだが、BVBはそのたびに一蹴している。これまで負傷者はほぼゼロなのだ。

「座席の上に立つ方が危険である」

 こう言われてしまうと、事故が頻発してテラスを廃止するほかなかったイングランド側は返す言葉がない。ドイツ人、さすがの秩序である。

 2万を超すサポーターで黄色に染まるゴール裏は壮観そのものだ。世界最高の入場率(94%)も記録し、ファンの熱量はバイエルン・ミュンヘンをもしのぐ。このファンからの圧倒的な支持が、苦しい時代を乗り越えられた源泉といっていいだろう。

 BVBがブンデスリーガの強豪にのし上がったのは1990年代だ。

 オットマール・ヒッツフェルト監督が率いて1994/95、95/96シーズンのリーグを連覇、96/97はCL王者にもなった。マティアス・ザマー、カール=ハインツ・リードレ、シュテファン・ロイター、アンドレアス・メラー、ユルゲン・コーラーなど、ドイツ代表選手が揃っていた。

 そこからまた低迷期に入るのだが、2008年にユルゲン・クロップ監督が就任してから黄金時代を迎えることになる。

 マインツを躍進させたクロップはBVBを率いて2010/11、11/12シーズンを連覇。バイエルンの一強体制を終わらせた。1970年代にバイエルンと覇を競ったMGに替わり、もう一つのボルシアが最大のライバルとして名乗りを上げたわけだ。

 クロップの作ったチームは、バイスバイラーのMGと実によく似ている。

 まず選手が若い。9シーズンぶりの優勝を成し遂げた2010/11シーズンの主力平均年齢は22~24歳。香川真司、ケヴィン・グロスクロイツ、マリオ・ゲッツェ、ロベルト・レヴァンドフスキら若い才能が躍動していた。

 そしてよく走る。若いということもあるが、走力を前面に押し出すプレースタイルだ。若く、速く、激しい。バイスバイラーの率いた「子馬」を彷彿とさせる。時代の違いもあって、クロップのチームはより戦術的ではある。ただ、バイスバイラーの時代と比べればの話であって、過剰に戦術的ではない。むしろ極力戦術的な縛りから開放された爆発力が魅力であり強さの源だ。

(文:西部謙司)

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『フットボールクラブ哲学図鑑』


定価:本体1900円+税

≪書籍概要≫
 本書では歴史の古いヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、 それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた。
例えばマンチェスター・ユナイテッドは「ミュンヘンの悲劇」によって、「何があっても前進する」精神性を身に付けている。
レアル・マドリーはアルフレッド・ディ・ステファノの補強が大成功し、「計画できないところは選手が補ってくれる」ことを現在も具現化している。
バルセロナはまさに哲学と呼ぶに相応しいものを持っているが、負ける時は負けるべしくて負け、ユナイテッド、レアルのように奇跡を起こすことがあまりない……。
それぞれのクラブにはやはりDNA(遺伝子)があり、“香り”がある。
ヨーロッパの厳選20クラブの哲学を知れば、現在のフットボールシーンをより楽しむことができるはずだ。

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【了】

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